八幡市立松花堂庭園・美術館を大解剖〜「松花堂弁当」ゆかりの地
京都府南部の八幡市にある「八幡市立松花堂庭園・美術館」は、江戸初期に活躍した文人僧・松花堂昭乗(しょうかどう しょうじょう)ゆかりのスポットとして知られています。ほかにも敷地内には茶室や四季折々の自然が見られ、人気の散策スポットでもあります。今回はそんな八幡市立松花堂庭園・美術館を徹底解剖! ぜひお出かけの際の参考にしてください♪
※記事中の情報・金額はすべて2024年9月時点・税込表記です。
国指定の名勝「八幡市立松花堂庭園・美術館」ってどんなところ?
広大な敷地内にある庭園と美術館
「八幡市立松花堂庭園・美術館」は総面積約2万2000平方メートル(甲子園球場のグラウンド約1.5個分)という広大な敷地を有し、庭園エリアと美術館などのエリアに分かれています。さらに、庭園は大別すると3棟の本格的な茶室がある外園、史跡・名勝に指定されている内園に分かれています。
公式YouTubeチャンネルでは園内の風景を見られるので、あわせてチェックしてみてくださいね。
松花堂昭乗ってどんな人?
庭園の名称の由来となっている松花堂昭乗(1584〜1639年)は、石清水八幡宮のある男山の山中にかつてあった僧坊「瀧本坊」の住職であり、阿闍梨となった高僧です。書・画・歌・茶の湯など幅広いジャンルで才能を発揮し、特に書は本阿弥光悦や近衛信尹と並んで「寛永の三筆」に数えられるほど堪能でした。晩年には泉坊書院の一角に、草庵「松花堂」を建てて隠棲。明治期の神仏分離令・廃仏毀釈を受けて、その建物は松花堂庭園に移され、保存されることになりました。
江戸時代のガイドブックにも載った「松花堂庭園」
著名な歌人や文豪たちも訪れた庭園へ
それでは早速、庭園から見ていきましょう。
外園には約40種類の竹・笹類をはじめ、多彩な花木が植えられています。大正・昭和の歌人である吉井勇は、昭乗やこの庭を詠んだ作品を残し、谷崎潤一郎や志賀直哉といった文豪たちも訪れたのだとか。
人々を魅了する庭園の四季
多くの文人たちを魅了した四季折々の花木はHPから「花暦」で見られますよ。春はしだれ桜や藤、夏はアジサイに女郎花(おみなえし)、秋は紅葉、冬は椿や梅と日本古来の四季の景色を楽しめます。
KYOTOSIDEで紹介した椿、紅葉、竹林の記事はこちら↓
茶室その1千宗旦好みの渋い「梅隠」
松花堂庭園には三棟の茶室があり、申し込めばお稽古やお茶会のために利用することができます。その一つが、こちらの「梅隠(ばいいん)」。千利休の孫で「放浪の茶人」と呼ばれる千宗旦(せんのそうたん)好みの茶室を再現したものです。四畳半の茶室は、網代(あじろ)の天井に土床(つちどこ)と、「侘び寂び」を強調するしつらえ。梅隠の前には水琴窟があり、突き出た竹に耳を近づけると、澄んだ涼やかな音色が耳をくすぐります。
茶室その2 昭乗の茶室を再現した「松隠」
こちらの「松隠(しょういん)」には、昭乗が住まいとした瀧本坊に、小堀遠州が建てたと伝わる茶室「閑雲軒」を再現した小間もあります。閑雲軒は男山の傾斜にあり、高さ7メートルの懸造りと呼ばれる清水寺の舞台のような建築方法で建っていたそうで、この茶室はその風情に近づけるため、高床式で再現されています。内部は九畳の広間と四畳台目の茶室(小間)、水屋などからなり、茶室に座すると、やや見下ろす形で庭園の景色を堪能できますよ。
毎月第2日曜の10:00~15:00には月釜会(席代1000円・お菓子代を含む。別途入園料が必要)が開催されているので、そちらに参加してみるのもおすすめです。(1月は初釜会、10月は忌茶会として開催、8月は開催なし。詳細は公式HPをご確認ください。)
茶室その3 現代の数寄屋大工が趣向を凝らした「竹隠」
木々に隠れるように佇むこちらは、新日鉄初代会長・永野重雄邸の茶室を写した「竹隠(ちくいん)」。現代の数寄屋大工が工夫と技を凝らして建てた新しい名席です。こちらでは、3~5月・10〜11月の日曜10〜15時に、日曜茶席が開かれています(700円・お菓子代含む・別途入園料必要。詳細は公式HPをご確認ください)。
「竹隠」は四畳半の茶室で、珍しい琵琶床がしつらえられています。また、窓の上の装飾には葦(ヨシ)を使って曲線が描かれていたり、柱々で使用する木材を変えていたりと、“さりげない贅沢”がちりばめられ日本らしいおもてなしの心を感じます。
貴重な建物が並ぶ史跡・名勝の内園
庭園の中央部分、塀に囲まれたエリアが内園です。こちらには昭乗が晩年を過ごした草庵「松花堂」(写真)や、草庵とともに男山から移設された「泉坊書院」があります。草庵「松花堂」は指定文化財、泉坊書院は登録文化財で、とっても貴重な建物なんですよ。
現在は修繕中のため、通常公開はしていません。特別公開時に見学できるので、詳細は公式HPをチェックしてみてください。
あわせて楽しみたい「松花堂美術館」
庭園の散策後は、ぜひ美術館エリアへ。昭乗や八幡市に関わる展覧会が随時開かれており、併せて見学すれば楽しさが倍増!春と秋には企画展・特別展を開催するほか、年に3回ほど館蔵品を中心とした展示も行っていますよ。
また、ミュージアムショップ「おみなえし」では、お茶会でも人気の抹茶「銘・松花堂」(30グラム・1300円)をはじめ、オリジナルグッズや和雑貨、京都のお土産などを購入することができます。
あの「松花堂弁当」ゆかりの地!?
みどころたっぷりの「八幡市立松花堂庭園・美術館」ですが、この“松花堂”という名称は「松花堂弁当」の由来にもなっているんですよ。
実は、この地は松花堂弁当ゆかりの地といわれていて、その起源は、農家が種入れとして使っていた十字に仕切った箱。これを昭乗が煙草盆や絵の具箱として使用し、昭和に入ってから、料亭「吉兆」の創始者が料理の器として利用し始めたといわれています。
敷地内には「京都吉兆 松花堂店」が併設されていて、実際に松花堂弁当をいただくことができますよ。松花堂弁当は「吉」(5100円※昼食限定)「雅」(8300円)の2種類あり、造里、八寸、焼物、 焚合など、季節のお料理が楽しめます。竹林を眺めながら、京都らしい味わいに舌鼓を打ってみてはいかがでしょう。
■■INFORMATION(施設情報)■■
史跡・名勝 八幡市立松花堂庭園・美術館
住所:614-8077 京都府八幡市八幡女郎花43-1
電話:075-981-0010
開園・開館時間:9:00~17:00(最終入園・入館は16:30まで)ミュージアムショップは11:00~15:00
休園・休館日:月曜日(祝日の場合は翌平日)、年末年始(12月27日~1月4日)
料金:庭園入園料 一般300円、美術館観覧料400円~(展覧会の開催内容により金額変動あり)
HP:京都洛南 関西有数の「侘び寂び」の日本庭園 松花堂庭園・美術館 (shokado-garden-art-museum.jp)
※草庵「松花堂」、泉坊書院を含む内園は、過去の災害被害による復旧工事のため、現在はご覧いただくことができません。(特別公開日を除く。詳細は公式HPをご確認ください。)
- source:KYOTO SIDE
- image by:KYOTO SIDE
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