二枚で完成する御朱印〜茨城の兄弟神社「二社参り」で味わう海と歴史とご利益の旅
太平洋の荒波が二枚に分かれて描かれ、貼り合わせるとひとつの絵になる。そんな趣向を凝らした御朱印が、この秋、茨城県の海辺に誕生します。舞台となるのは、ひたちなか市の「酒列磯前(さかつらいそさき)神社」と大洗町の「大洗磯前(おおあらいいそさき)神社」。ともに平安時代はじめの創建を伝え、古くから「兄弟神社」と呼ばれてきた二社です。
2026年9月1日より頒布が始まる「二社参り限定御朱印」(各1,000円)は、両社をあわせて参拝してこそ完成する、旅の思い出にぴったりの一枚。今回は、その見どころとともに、二社に伝わる千年の物語をご紹介します。
太平洋を望む二つの古社「兄弟神社」を訪ねる旅


酒列磯前神社は茨城県ひたちなか市、大洗磯前神社は東茨城郡大洗町に鎮座し、車であれば20分ほどの距離に位置します。どちらも太平洋を望む高台にあり、大洗磯前神社の「神磯の鳥居」は、海から昇る朝日と鳥居が織りなす絶景として知られ、酒列磯前神社の「海の見える鳥居」もまた、参拝者を魅了する名スポットです。
両社は、国づくりの神である大己貴命(おおなむちのみこと)と少彦名命(すくなひこなのみこと)をともにお祀りしており、起源も御祭神も同じであることから「兄弟神社」「対の宮」として崇敬を集めてきました。大洗磯前神社では両神を主祭神として、酒列磯前神社では少彦名命を主祭神、大名持命を配祀神としてお祀りしています。この共通点ゆえに、地元では古くから両社を一緒に参拝する「二社参り」が盛んに行われてきました。
海と歴史、そして絶景をあわせて楽しめるこのエリアは、茨城観光の中でも特に趣のあるコースといえるでしょう。大洗のご当地グルメや水族館なども近く、参拝と観光をあわせた一日プランを組みやすいのも魅力です。
- 酒列磯前神社
- 茨城県ひたちなか市磯崎町4607-2
- 029-265-8220
- 磯崎駅
- 1,000円(二社参り限定御朱印)
- 2026年9月1日〜
- 8:00〜16:00(授与所)
- 公式サイト
- 大洗磯前神社
- 茨城県東茨城郡大洗町磯浜町6890
- 029-267-2637
- 大洗磯前神社下
- 1,000円(二社参り限定御朱印)
- 2026年9月1日〜
- 8:30〜16:30(御朱印)
- 公式サイト
千年前、海の彼方からやってきた神様


なぜ二社は「兄弟」と呼ばれるようになったのか。その由来は、平安時代の歴史書『日本文徳天皇実録』にまでさかのぼります。
斉衡3年(856年)12月、大洗の海岸に二つの奇妙な石が出現し、神霊が里人に憑依して「私は大奈母知・少比古奈命である。かつてこの国をつくり終えて東の海に去ったが、人々を救うために再び帰ってきた」と告げたと伝えられています。その翌年である天安元年(857年)、両神は朝廷から「官社」に列せられ、さらに「薬師菩薩明神」の神号を授けられました。当時の都では地震や疫病が相次ぎ、人々の不安が広がっていた時代。そんな折に海の彼方から現れた神は、人々を救済する存在として深く信仰されるようになったのです。

この故事にちなみ、両社は「兄弟神社」と称されるようになり、明治・大正・昭和期には雑誌や鉄道案内でも紹介されるほど、「二社参り」の風習は全国的に知られていきました。今回の限定御朱印は、こうした千年にわたる歴史的なつながりを、現代の参拝者にもわかりやすく伝える企画といえます。
合わせて一枚の絵になる、御朱印デザインのこだわり

今回の御朱印で目を引くのは、外側に描かれた大波の立体絵です。まるで葛飾北斎の「神奈川沖波裏」を思わせる、太平洋の荒波がダイナミックに表現されています。波の先をよく見ると、大洗磯前神社の「神磯の鳥居」、酒列磯前神社の「海の見える鳥居」がそれぞれ描き込まれており、両社の象徴的な風景をひと目で感じ取ることができます。
この波の絵には、「神様が恵みを運んできたように、一人一人にご利益がおとずれますように」という願いが込められているそうです。大波の絵をめくると、内側には御社殿の絵とともに「二社参り」の由来やご利益についての説明文も添えられており、参拝の記念だけでなく、ちょっとした学びも得られる仕掛けになっています。
そして最大の見どころは、二枚の御朱印を組み合わせたときの完成形。御朱印帳に「右側に大洗磯前神社、左側に酒列磯前神社」の順で貼ると、左右から大波が打ち寄せるような迫力ある一枚絵が完成し、中央には「福徳延寿」の文字が浮かび上がります。一社だけでは完結しない、まさに「二社参り」ならではの体験です。
大国さまと恵比寿さま、神社ゆかりの動物たち


御朱印の反対側には、赤い朱印で「七福神」の大国さまと恵比寿さまが描かれています。大洗磯前神社の御朱印には、御祭神・大己貴命の別名である「大国さま」が、米俵に座り打ち出の小槌を手にした姿で登場。そのお隣にはヒキガエルが描かれています。これは日本神話で大己貴命が少彦名命についてヒキガエルに尋ねたという逸話にちなみ、境内にある“三匹の蛙の石像”は「無事カエル」の語呂合わせで親しまれています。
一方、酒列磯前神社の御朱印には、御祭神・少彦名命の別名である「恵比寿さま」が、大きなタイを抱えて釣り上げる姿で描かれています。お隣にいるのは海亀。境内の「幸運の亀さん」の石像は、なでると金運や宝くじ当選のご利益があるといわれる人気スポットです。両社は古くから漁業関係者の信仰も厚く、タイや海亀といった海にゆかりのモチーフが選ばれているのも納得です。
旅の記念に、二つの御朱印を重ねて

「二社参り限定御朱印」は、単なる参拝の記念品ではなく、千年の歴史でつながる兄弟神社の物語を一枚の絵として体感できる特別な企画です。大波の立体絵、鳥居の描写、大国さまと恵比寿さまの朱印、そして二社を合わせたときに浮かび上がる「福徳延寿」の文字。そのすべてに、両社の歴史と参拝者への願いが込められています。
茨城県を訪れる際は、ぜひ酒列磯前神社と大洗磯前神社をあわせて参拝し、それぞれの御朱印を受けてみてください。御朱印帳を開いたときに広がる、荒波と鳥居の情景は、旅の記憶をより鮮やかに彩ってくれるはずです。歴史好き、御朱印集めが趣味の方はもちろん、茨城の海の絶景を楽しみたい旅行者にとっても、この秋おすすめしたい参拝コースのひとつです。


