「子どもと学ぶ」をきっかけに人が動けば、まちの知は地域の外へ広がる
内部の人、外部の人、両者が交わることで生まれる発見
農村クリエイティブラボの第1弾のイベントは、岩村に唯一ある茅葺宿で行われた茅葺屋根のワークショップでした。
茅葺の職人さんを呼んで、茅を刈り、茅葺文化を伝授してもらうワークショップには、NPOのメンバーはもちろんのこと、名古屋から参加した人もいたそうです。
岩村が育んできた文化を直接学べる機会ですが、「実は、岩村の人たちの方が学びは多かったんです」と、農村クリエイティブラボ運営者のひとり、平林悠基さんは話します。
「昔からある茅葺屋根の家は、岩村の人々にとって、新鮮なものではなく、当たり前のものになっていましたが、(茅葺屋根が)どういう構造になっていて、どのように作られているか分かっていなかったんですね。特に、NPOの70代のメンバーが、『とても学びになった』と言っている姿は印象的でした。」
講師として岩村を訪れた茅葺職人さんも、岩村のオープンな人柄を褒めてくれたそうです。
「一緒にご飯を食べたり、話したりしながら、外から来た人と開放的に温かく、交流出来るのは当たり前のことではなく、岩村の魅力の一つなんだと気づきました。新しいものを取り入れていける地域だからこそ、アートやデザインの視点を取り入れ、『伝統』とミックスしていける土壌を固めていきたいですね」。
「子どもの教育」を共通項につながりが生まれた、平林悠基さんインタビュー
農村クリエイティブラボについてお話を聞かせてくれた平林悠基さんは、恵那市岩村出身で、現在中学校教員として働いています。
大学在学中にインターネットへの関心を機に、東京のIT系企業でインターンを開始した平林さんは、東京やロンドンのITベンチャーで勤務後、オリンピック選手数名と協同で会社を設立するなど、多様な活動を展開。
海外への関心も同時に持っていた平林さんは「東ティモール」への旅を機に、教育への関心を深め、恵那の豊かな自然を生かしたキャンプやワークショップを子どもたちと行っています。
以前マチノコトで取り上げた恵那の多様な働き方を考えるイベントにも登壇していました。
――岩村で生まれ育った平林さんですが、農村クリエイティブラボの構想は昔からあったのでしょうか。
平林さん:「大学生、社会人の頃にはありませんでした。ベンチャーや会社を運営するなかで、教育に行き着き、子どもたちが自然体験を得られる機会が実現できれば、意味のある教育が実現できるのではないかと考えて。たまたま自分が生まれ育った場所が岩村だったので、岩村で活動を行ううちに、歴史や人柄など、地域独自の魅力が見えてきて、繋がりが生まれていったんです」。