極めてめずらしい遺構の露出展示も。静岡の新名所「静岡市歴史博物館」
「駿府(すんぷ)」とは、かつて駿河国(するがのくに)の中心部として栄えてきた都市。明治時代に「静岡」と改称されるまで約1200年かけて発展してきました。
江戸幕府を開いた徳川家康ともゆかりが深い駿府に、2023年1月「静岡市歴史博物館」がグランドオープンしました。
静岡の新たな観光名所「静岡市歴史博物館」
「静岡市歴史博物館」は、JR静岡駅から徒歩約10分、または静岡鉄道静岡清水線・新静岡駅から徒歩約8分。駿府城の目の前に建てられました。
同館では、75年にわたる生涯の約3分の1を駿府で過ごした「徳川家康」に関する基本展示をはじめ、戦国時代末期の道と石垣の遺構を博物館内に露出展示するという全国的にめずらしい試みも。
3階展望ラウンジから望む駿府城や富士山は必見で、ミュージアムショップやカフェもあります。
2023年、大河ドラマ『どうする家康』で再び注目を集めた徳川家康について、その人生や駿府とのかかわりについて学べる博物館。今回はその見どころを紹介します。
当時の道と石垣を”発掘された状態のまま”展示
静岡市歴史博物館の建物は、「金沢21世紀美術館」「ルーブル美術館別館」などを手掛けたSANAA事務所が設計を担当しました。
城下から駿府城二ノ丸へと続く雁行動線を建物内部まで立体的に延長することで、静岡市街と駿府城公園を結ぶルートを形成。
外装は漆喰調塗装にアルミエキスパンドメタル、1階部分には木製建具やひさしで歴史的景観との調和を図り、街に開かれた博物館として”静岡市の新たなランドマーク”となるべく誕生しました。
博物館を入るとすぐに、建設前の発掘調査で見つかった、長さ33m、幅2.7mにわたる「戦国時代末期の道と石垣の遺構」があります。
ここはかつて駿府城の三ノ丸、城代屋敷があった場所で、ある意味「静岡市街のルーツ」とも言えるでしょう。
遺構が作られたのは、徳川家康が駿府城を築いたころと伝えられており、道の両側に残る武家屋敷の石垣などをすぐ近くで見学することができます。
この貴重な遺構を壊すことなく保存して公開するため、発見後に当初の建築設計が変更されたというエピソードも。
1階にはほかに、徳川家康をはじめ静岡の歴史を研究するための図書がそろう「家康公研究室」や、古代からの遺物レプリカや100年前の名所を紹介する鳥瞰図(ちょうかんず)など静岡市の歴史と空間を表現するギャラリーに、学芸員トークやワークショップなどがおこなわれるスペースなどがあります。
今川期から現代までの「駿府」を貴重な遺品や資料でわかりやすく紹介
博物館の2階と3階の半分は、基本展示室。2階の「基本展示室1」は、生涯を通じて戦いに明け暮れた徳川家康の日々と、その人となりに迫る展示内容です。
また、徳川家康が幼少期から青年期を過ごした駿府は当時、戦国の有力大名だった今川氏が治めていた時期。江戸時代とはまた異なる駿府が繁栄した様子の展示も、興味深いものがあります。
博物館3階の「基本展示室2」では、徳川家康が基礎を築いた東海道と、大御所家康なき後の駿府城下町の繁栄などについて紹介。
さらに、明治維新後の徳川氏と静岡との関係や、お茶の輸出で海外貿易がさかんに行われるようになった清水港の発展ぶりなどもわかりやすく展示されています。