商店街にはヒーローが必要なんだ。板橋「まちづくりプロレス」誕生秘話

区内に広がり続ける「笑顔の輪」

いたばしプロレスリング・上板橋北口商店街大会から約1か月後の7月31日(日)、板橋区役所にも程近い板橋宿不動通りにおいて、いたばしプロレスリング・板橋宿不動通り商店街大会が開催されました。

当日は商店街恒例の夏祭り「ラッピーフェスティバル」が開催されており、この日は新しい地元ヒーロー「いたばし不動ッピー」がデビューすると事前PRされていました。

新しい地元ヒーローの誕生をこの目でみようと、再び試合会場を訪れました。

いたばしプロレスリングの各商店街所属の地元ヒーローは、いたばし不動ッピーで5人目です。

1人目はいたばしプロレスリング発祥地・上板橋北口商店街公認の「グレート・ピカちゃん」、2人目はハッピーロード大山商店街公認の「ハッピーロードマン」、3人目は中板橋商店街公認の「なかいたへそマスク」(中板橋商店街の名物イベント『へそ祭り』に因んだマスクマン)、4人目は板橋区舟渡町公認の「マスクド・ふなどん」です。

「オリンピックの応援と同じように、地元出身という設定のヒーローがいると、地域の人たちの心は一つになりやすいんです」

はやて代表の言葉通り、慣れないとちょっと発音しにくいリング名にもかかわらず、「いたばし不動ッピー」が登場すると、子どもたちの間から「不動ッピー! 不動ッピー!」の大合唱が沸き起こりました。

ウサギを意匠化した地元商店街のイメージキャラクター「ラッピー」が地元ヒーローに変身したという設定がわかりやすく、また愛らしい長い耳を持ついたばし不動ッピーのデビュー戦も、大いに盛り上がりました。

要介護レスラー・がばいじいちゃんの入場パフォーマンス
じいちゃんの高難度ワザ「ロープ渡り」に観客はびっくり!


ちなみに板橋宿不動通り大会の後、8月27日・28日の2日間開催となった「いたばしプロレスリング・ハッピーロード大山商店街大会」には、地元ヒーロー・ハッピーロードマンの悪の化身(!?)と思われる新キャラ「ハッピーロードマン・ダーク」が登場しています。

いたばしプロレスリングを招致し、地域活性化のスプリングボードにしようとする商店街は、この2年間で5か所に増えました。さらにハッピーロードマン・ダークにみられるように、いたばしプロレスというワンダーランドに住む地元ヒーローたちのキャラクターの細分化・多様化も始まっています。

上板橋北口商店街のイベント企画として始まった試みが、5年間の助走期間をへて、いたばしプロレスリングの旗揚げ後2年間で一気に花開き、さらにその輪を広げていこうとしています。

それはつまり、草の根の活動から生まれる笑顔の輪が、点から面へとエリアを広げていることを意味するといえるでしょう。

いたばしプロレスリングの活動の場は、イベント会場での試合にとどまりません。例えば各商店街で大売り出しがあればサイン会を開いたり、社会福祉などのキャンペーンが行われれば呼びかけを行い、キッズ向けのプロレス教室を通じて子どもたちに体を動かすことの楽しさを教えたり、さまざまな活動を多角的に行っています。

また、今回の試合会場での風景で、筆者がとりわけ感銘を受けたのは、九州プロレス所属の「がばいじいちゃん」に対する会場の声援の大きさでした。要介護の高齢者レスラーという設定のがばいじいちゃんがヨロヨロと登場すると、お年寄りはもちろん、家で親の介護をしていると思われる世代の人たちの反応が、静かにヒートアップするのです。

また、がばいじいちゃんが試合でピンチになると、「じいちゃんッ! じいちゃんッ!」という子どもたちの大声援が会場全体を包み込みます。

老若男女の観客が心を一つにして応援する風景は、いたばしプロレスリングの全編にみられる特徴です。しかし、がばいじいちゃんへの大声援はちょっと特殊で、超高齢化社会にあって何かと肩身の狭い思いもしがちな世代の観客や、介護家族をもつ世代の人たち、さらには孫・曾孫世代の子どもたちの心の琴線に触れる「何か」があるように思われてなりません。

ハッピーロードマンはハッピーロード大山商店街の守護神
はやて代表、いたばし不動ッピーと記念撮影の板橋宿不動通り商店街・松山浩哉理事長

いたばしプロレスリングの推進エンジン役を果たす「はやて・髙木コンビ」は異口同音に、「こうした動きを板橋区全域に広げていきたい」、そして「笑顔の輪が板橋区全域にやがて広がり、そのために板橋区が暮らしやすい街になったねと思ってくれる人が少しでも出てきたり、プロレスがキッカケになって地域への愛着が生まれたりしたら、本当に嬉しい」と語ります。

まちづくりプロレスの代表兼プロデューサー兼ヒーロー、はやて選手
試合を終えてファンに感謝の挨拶

そして、これまでご紹介してきたように、いろいろな意味で多様できめ細かな目配りをほどこしたプロレス興行を、「まちづくりプロレス」の名のもとに継続的に行い、地域の人たちに笑顔を届けるというコンセプトで、ファンを拡大し続けているいたばしプロレスリングの活動は、各方面からの注目も集めはじめています。

リングの横ではスーパーボールすくい。このゆるさがグッドです

今年1月に坂本健板橋区長から「板橋区公認プロレス」のお墨付きをもらったのは、その象徴的な出来事の一つといえます。

板橋区では機会をみてはスポーツ振興、産業振興などに、いたばしプロレスリングとのコラボも視野に入れていくとの姿勢を打ち出しており、こうした動きも今後の推移が注目されます。

試合後に必ず行われる握手会には笑顔のファンが殺到

さて今回は「まちづくりプロレス」(いたばしプロレスリング)の現況と軌跡を、ざっとご紹介してきましたが、きたる10月23日(日)には「いたばしプロレスリング2周年記念大会(有料)」が、東武東上線・成増駅前の成増アクトホールで開催されます。

3年目を迎える「まちづくりプロレス」(いたばしプロレスリング)については、今後も定点観測を続けていきたいと思いますが、この記事を呼んで興味をおぼえた方はぜひ、試合会場に足を運んでみてください(商店街主催の大会はみな無料)。

とにかく面白いですから!

※「いたばしプロレスリング」の各大会情報は公式サイト参照

  • image by:未知草ニハチロー
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
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日本各地をマタ(股)旅散歩しながら、雑誌などにまちづくりのリポートをしている。裸の大将・山下清のように足の裏がブ厚くなるほど、各地を歩きまわる(散歩する)ことが目標。「未知草ニハチローのまちづくりのココロ訪問記」は地域ごとに現在進行形で行われている、まちづくりのココロを訪ねる小さな旅のシリーズ。

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