沖縄好きなら誰もが通る、おばあの洗礼「カメカメ攻撃」
昔は沖縄といえば夏旅のイメージしかありませんでしたが、旅行会社や飛行機会社のCM効果で、今ではすっかり“冬のほっこり沖縄旅”というものが存在します。
この“ほっこり”は、気候的な暖かさと、表情豊かな沖縄の島人たちがかもしだす人情的な“ほっこり”をかけたもの。
実際に沖縄の旅では島人と触れ合うことも多く、なかでも沖縄のおばあといえば、その圧倒的なキャラの強さは日本全国を見渡しても右に出るものがありません。
沖縄に行ったら必ず受ける、おばあのカメカメ攻撃!
沖縄にはまり、リピーターとなった旅人のすべてがまず経験するのがおばあの「カメカメ攻撃」です。すでに体験済みという人ももちろん多くいらっしゃることと思いますが、なんだそりゃ?と思っている読者の方々に、今回はこの「カメカメ攻撃」を説明したいと思います。
まず、はじめに「カメ」を漢字で書くとしたら「亀」でも「甕」でもなく、「咀め」だということを断っておきましょう。
「カム」とは沖縄の言葉で「食べる」という意味。おそらく食べ物を咀むというところから来ているのでしょう。
つまり「カメ〜カメ〜」とは「食べろ〜、食べろ〜」という意味の言葉になります。この「カメ、カメ」は沖縄のおばあの口癖のようなもので、とにかく客人を(客人でなくても)もてなすのにご飯をお腹いっぱい食べさせるというのが沖縄のおばあの親切であり流儀なのです。
そんなおばあの「カメカメ攻撃」に観光者である私たちが遭遇する確率がもっとも高いのが食堂です。普段、食堂というものにあまり馴染みがないという人でも、沖縄ではきっと食堂へ足を運ぶ機会があるはず。
というのも、沖縄ではとにかくいたるところに◯◯食堂と食堂の看板を掲げるお店があり、その中には行列ができるような有名なお店も少なくなく、沖縄の食べたいものリストには必ずといっていいほど◯◯食堂の◯◯というのが出てくるのですから。
沖縄そばをはじめ沖縄のB級グルメを語るとき、食堂はその存在感をあますところなく発揮します。
この沖縄の食堂文化については語るべきことが山ほどあるのですが長くなるので今回は割愛させていただくとし、とりあえず、おばあの「カメカメ攻撃」に焦点を当てて話を続けますね。
基本的に沖縄のごはんは量が多いのが特徴です。大抵の食堂やそばやの(並)とか(中)というのは(大盛り)や(大)に値する、ということは旅行中、飲み食いしてみればすぐに気づくこと。
そんな沖縄の食堂において、ありえないないくらいのボリュームを売りにしている店もあり、超特大級の大盛りを出すお店が名物店として人気があったりするのも沖縄らしいところ。
メガ盛り食堂も、ごくごく普通の食堂も(ごくごく普通の食堂はたいてい大盛りです)、沖縄の食堂につきものなのが「もっとカメ〜、もっとカメ〜」とカメカメ攻撃をかけるおばあの存在。
ありえないほどの山盛りの食事を出しておきながら、おまけのフライだとか、おまけの刺身だとか、おまけのそばだとかを「ほら、これも食べなさい」と次々出してくる、というのが「カメカメ攻撃」です。
例えば
おばあ「これ、おまけのお刺身ね。食べてね」
私「ありがとうございます。あ、でもそんなにいっぱい食べられないので大丈夫部です」
おばあ「若いから平気さぁ。これ、ちゃんぷね。サービスさぁ」
私「あ、本当にこんなにたくさん食べられないので、サービスは気持ちだけでじゅうぶんです。ありがとうございます」
おばあ「おそばも食べてね。はい、どうぞ」
私「あの、本当にお腹いっぱいで食べられないので」
おばあ「ごはんのおかわりは?」
私「いえいえ。おかわりとか無理です」
おばあ「お味噌汁もっと飲んでね」
私「本当にありがとうございます! でも、もうこれ以上食べられません」
おばあ「てんぷら食べる?」
私「………。」
と、こんな感じ。
「もうお腹いっぱいで食べられません」と言うこちらの言葉もおばあの耳にはまったく届かず、とにかくサービスだから❤と食べ物(しかも山盛り)を次から次へと出し、親切心丸出しの笑顔で「カメ〜、カメ〜」が永遠に続くのだからたまりません。
どんな大食いの男の人もこの「カメカメ攻撃」には辟易するらしく、沖縄リピーターであれば食べ過ぎで真っ青になり、這々の体で逃げるように店から出てきた経験が必ずあります。
この「カメカメ攻撃」は食堂に限ったことではなく、民宿や、ふらりと入った飲み屋や、その他ありとあらゆるところ(おばあが出没する場所であればどこでも!)で遭遇する可能性があり、まったく油断も隙もありません!!
もちろんこの「カメカメ攻撃」は、純粋におばあの親切心とおもてなしの気持ちの表れからの行動。
若い人なんだからお腹が減っているだろうに、いっぱいいっぱい食べなさいね、他には何もできないけれどご飯なら食べさせてあげられるからね、という優しい母性本能にあふれるもの。
「ありがとうございます。でも、お腹いっぱいでもう食べられません」という私たちの必死の言葉もおばあにとっては単に遠慮しているように聞こえるようで、おばあのサービスが止まることはないのです。
冬の沖縄で、おばあの愛情たっぷり「カメカメ攻撃」の洗礼を受け、人の温かさに触れてみる旅などいかがですか?
image by: 西表カイネコ/ photozou
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