オトナの分かれ道。54歳から始めた千葉県の乗馬クラブが大成功
あなたは定年後の人生を考えたことは有りますか?最近では、定年後も再就職や再雇用を選択する方も多いですが、千葉県市原市で人気の乗馬クラブ「長谷川ランディングファーム」を経営する長谷川一誠さんは、大企業を自主退職し、50代から今の事業を立ち上げ、大成功しました。
「都会を離れて田舎でやりたいことをやる」という選択がひょっとしたらあなたの人生を変えるかもしれませんよ!
大手企業を辞め、乗馬の世界へ
千葉県市原市に5000坪の敷地を持つ乗馬クラブ「長谷川ライディングファーム」。サラブレットやポニーなど15頭以上の馬を所有し、全国乗馬倶楽部振興協会認定のインストラクターが5名という人気の乗馬クラブです。
軽い乗馬体験から、本格的な馬場馬術、障害馬術、流鏑馬、鞍無しのバランスレッスンなど幅広いレッスン内容を用意し、就学前の児童から70代後半のシニア世代まで、多くの会員が集っています。菜の花や桜などの季節ごとの草花が咲き競う環境も愛される理由でしょう。
この乗馬クラブ、実は、大手企業のサラリーマンだった長谷川一誠さん(70歳)が一念発起して作りあげた生涯現役実践の場でもあるのです。
長谷川さんは大手企業でシステムエンジニアとして開発プロジェクトの統括者や部長職なども務め、順調なサラリーマン生活を送っていました。しかし、50代半ば頃は、日本全体が不景気の波に襲われ、大企業ですら苦渋の決断として、次々とリストラ策、早期退職制度を発表する時代でした。
長谷川さんの会社も「年収をカットするが、1年間出社しなくてもよい代わりに、次の仕事を見つけるか、独立の準備をすること」という制度を発表しました。
当時、長谷川さんは54歳。すでに年収カットは行われており、「なによりも、このつまらない毎日から脱出したい。自分のやりたいことで、将来的には社会貢献につながる仕事がしたい」と思うようになっていました。そこで、この制度を使って、早期退職することを決意したのです。
趣味の乗馬に賭ける想い
技術者として生きるべきか、それともほかに何かできることがあるか。悩んだ末に選んだのは、家族全員の趣味として続けてきた乗馬でした。乗馬は40代から始め、いつしか調教まで手がけるようになり、乗馬クラブの経営事情もよくわかるようになっていました。
会員が楽しく上達できるような理想の乗馬クラブを作りたい。何よりも心強かったのは、その思いに家族が理解を示し、賛成してくれたことでした。
長谷川さんは地域の商工会主催の創業塾や中小企業大学の創業支援セミナーに通い、事業計画の作り方や融資の受け方などを学びます。
そして、予定通り1年で会社を退職し、2001年2月に乗馬クラブ「長谷川ライディングファーム」を設立したのです。自己資金は退職金などを当て2000万を用意しました。
事業計画は特に慎重に作成。標準として算定したものと最悪ケースの2種類を用意しました。その計画の確かさが評価され、金融公庫から3000万円ほどの融資も受けることができたのです。
大きな力になったのは人とのつながりです。コンサルタントの先生から乗馬用地を貸してくれる地主を紹介してもらったり、建設会社が残した現場事務所をクラブの建物として流用できたり、会社の統廃合で不用になったオフィス家具を安く譲ってもらったり。
初年度は赤字だったものの、2期目からは単年度黒字に転換。5年目の春には借地を返して、今の市原に土地を購入し、新しい厩舎とクラブハウスを建てるまでになりました。