1600羽のフクロウが待つ、和歌山の名所「行列のできるパワスポ郵便局」
そしてドアを開けると……こ、これは、なんという神秘的きわまりない光景。局内に膨大な数のフクロウが群れをなしているではないか。
窓口はもちろん(もちろん、ではないのだろうが)床から天井まで、陶器や木彫り、ぬいぐるみやペーパークラフトなどなど、さまざまな素材でできたフクロウがびっしり。飾りつけの域を越え、まるでおとぎの国の森の中で開局しているよう。
フクロウはギリシャの農業神である女神アテネの従者であったことから豊穣の象徴とされている。くだものの生産者が多い紀の川市にフクロウを多く展示するスポットがあってもおかしくはない。
に、してもですよ。郵便局のなかでのこのたわわな数、すごすぎやしませんか。ここにはいったい何羽のフクロウがいるのだろう。
ご主人の石橋彰彦さん(57歳)曰く、
「1,550羽までは数えたんやけど、それ以降、わからんようになってしまって。1,600羽くらいですかねえ」
1,600羽!
実は僕は昨年も一度、こちらを訪れている。そのときは「1,250まで数えたから、いまは1,300にはなっているでしょうね」というお答えだった。わずか1年のうちに300羽も増えていたのか。すさまじいスピードで増殖している。なんてお盛んな鳥たちですこと。
そんな、ハリー・ポッターもびっくりなフクロウでいっぱいの郵便局だが、近年めざましく増えているフクロウカフェとは誕生のいきさつがまるで異なる。というのも、ご自身たちで意識的にコレクションしたものは、ごくわずかなのだ。
ではいったい、郊外の街の小さな郵便局になぜこれほどたくさんのフクロウが集結しているのだろう。
「実は郵便局を始める以前に1羽のフクロウを飼っていましてね。それが死んでしまって、剥製にしたのが始まりなんです」(彰彦さん)
発端は、一体の、フクロウの剥製だった。
この下井阪簡易郵便局は、知人に引き継ぎを依頼された石橋さんが、受託資格を取得し、2007年3月から始めたもの。局長は妻の由紀子さん(56歳)。そして長女・植松久美子さん(31歳)の親子3人で仲よく、つつましく営まれている。
そんな石橋さん一家が初めてフクロウと出逢ったのは1995年12月、家族でドライブをしていたときのこと。
「大阪と和歌山をつなぐ風吹峠トンネルの手前で、羽をバタバタさせていたフクロウを見つけたんです。おそらく数台前の車にぶつかったんでしょうね。けがをしていたので毛布にくるんで、自宅に連れてかえって傷の手当てをしたんです」(彰彦さん)