1600羽のフクロウが待つ、和歌山の名所「行列のできるパワスポ郵便局」
この瀕死のフクロウに娘の久美子さんがなぜか「ポッポちゃん」と名づけ、家族総出で看病をした。しかし内臓を痛めていたポッポちゃんは介抱むなしく、3か月後に息を引き取った。
「なきがらを埋葬しようとしたのですが、この子(久美子さん)が『埋めるのはかわいそうや』と言うて泣くんですよ。そやから仕方なく、職人さんをほうぼう探して、剥製にしたんです」(由紀子さん)
フクロウグッズが増えたきっかけは、剥製に姿を変えたものの家族の一員であるポッポちゃんを自宅から局内へと移したことから幕を開ける。
愛された証しである剥製を見たお客さんが、そのいわれを聞いて「うちのフクロウも仲間に入れてあげて」「フクロウの人形を作ったから置いてちょうだい」とフクロウ型の雑貨やハンドメイド作品を持ち込むようになった。そして開局8年目にしてその数は、およそ1,600羽にまで膨れあがったというわけだ。
カウンターに設置された威風堂々とした焼き物は、腰を痛めた80歳近い陶芸家の男性が「最後の作品になるだろう」と、遺作を意識して作成したもの。
しかし自分が焼いたフクロウ像をお客さんが撫でてくれているのを見て、「やっぱりまだまだ作陶を続けたい」と、諦めかけていた手術を受ける決意をした。そんなふうに置かれていったフクロウには、訪問者それぞれの想いがあり、1羽1羽にドラマがある。
なかには雑貨ではなく、2011年には生きたフクロウが持ち込まれたこともあった。
「小型のフクロウが車にあてられたみたいで、傷ついたその子を小学生が傘でつっついとったんですって。それを保護して、うちに連れて来はったんです。
でももうお腹を見せてひっくり返っていて、脱水症状を起こして自分では立てない状態でした。もうあかんかもと思ったけど皆で懸命に看病したら次第に元気を取り戻し、ついには手乗りになりました」(久美子さん)
「ふくちゃん」と名づけられたそのフクロウは自力で飛べるようになるまで3か月のあいだ、この郵便局で飼われ、訪れる人たちをほっこりさせていた。もはやフクロウに関しては動物病院より信頼をおかれているのだ。
そうしてポッポちゃんが剥製になって20年。フクロウの羽根はやわらかく、「剥製は3年しかもたない」と言われていたが、いまだ1本たりとも羽根が抜け落ちないのだとか。
「それは『ポッポちゃんの心が生きているからやで』と皆さんおっしゃるんですよ」(彰彦さん)