ロマンを求めて。日本最西端「与那国島」に眠る古代文明
与那国島のゴールドラッシュ
現在は沖縄の他の島と寸分違わず、離島らしい実にのんびりとした雰囲気に包まれる与那国島ですが、一風変わった出来ごとが当然のように島の歴史に刻まれるのははやり国境の島ならではです。
戦後の1946~1951年、いわゆる沖縄の人々がケーキ(景気)時代と呼ぶところの時代、島は台湾からの密輸入品と米軍や日本軍の軍用品の横流し貿易港として大いににぎわったことをご存じでしょうか。
当時を知る人の話によると、一攫千金を目指した人々がこの小さな島に集まり、人口は2万5,000人~3万人にもふくれあがったとか。
島人たちもこの時期は1日働くだけで10日分ほどの賃金がもらえたというのだから、その潤いがどれほどのものだったのかは、バブルどころの騒ぎではありません。
集落には食堂や飲み屋が軒を連ね、連日連夜の大騒ぎが5年間続いたのち、琉球政府の成立によりあっという間に幕を閉じましたが、ときおり当時を知る島人から聞く“ケーキ時代”の話は、いまもなお臨場感にあふれ、一攫千金を夢見た人々の熱気が伝わってくるようです。
久部良の集落を散策しながら、そんなゴールドラッシュに沸き熱病に浮かされるように活気立った当時の島の様子を想像してみるのも、なかなか味わい深いものです。
余談ですが、西表島にもかつて炭鉱があり、大いに島の景気がにぎわった時期がありました。
沖縄の島々は、沖縄戦を含めそれぞれの島に島の歴史があります。あまり焦点を当てられることもない、もしくはそもそも本土の人間にはほとんど知られていない史実、忘れ去られようとしている沖縄の島々の歴史に耳を傾けるきっかけを、この島は教えてくれるような気がします。
さて、与那国島のトピックとしては、ほかにもモスラのモデルになった世界最大の蛾「ヨナグニサン」が発見され生息すること(後の研究で、オセアニア地域にさらに大きなチョウが分布することがわかり、世界で2番目というのが正しい解釈のようです)がよくあげられます。
島の「アヤハミビル館」ではヨナグニサンの生態をはじめ島の自然について展示で学ぶことができるので、島をぐるりとまわる前に立ち寄るのがおすすめです。また、島のまわりには「立神岩」「軍艦岩」といった自然が作り出した奇異な岩が点在し、ダイナミックな地形を体感することができます。
ユニークなスポットとしては「1000万円の墓」というのがあり、祖納の集落にある民宿に泊まると、島人がみんな「1000万円の墓には行ったか?」と場所を説明してくる島人おすすめの観光スポットとなっています。なお、このお墓は一説には「1億円のお墓」とも言われているそう。
沖縄のお墓は本土のそれと比べてかなり大きいことは知られていますが、このお墓は大きな凱旋門やリビングまでついた巨大なもので、本土の人間にとっては墓という概念を大きく超えたもの。すごいなぁ〜と唸らずにはいられません。
与那国島の魅力として今回ピックアップしたものは、あくまでもかいつまんだ話でしかなく、まだまだ島には絶景スポットや自然景勝地などもたくさんあり、豪快な島人気質を垣間見るのもとっても楽しいと思います。
実際に与那国島を訪れてみると、ダイナミックな断崖絶壁の地形やその海の色に日本ではないどこかを思わせる不思議な空気を感じますが、それこそが与那国島の魅力。ここは日本であって日本ではなく、沖縄であって沖縄でもない場所……国境の島なのです。
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