まるで時が止まった街。古都プラハで「ミュシャ」の軌跡を追いかけるロマン旅

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2024/07/28

モルダウ川がゆるやかに流れるチェコの首都である古都プラハは、屋根の先がとがっている高い建物が多いことから「百塔の街」とも呼ばれています。中世からまるで時が止まったかのような旧市街全体は、歴史地区としてユネスコ世界遺産に登録されるほどの美しさです。

さらには「おとぎの街」とも「世界で一番美しい街」とも称されるプラハ。今回は見逃せないスポットが多くあるなかから、アール・ヌーヴォーの旗手アルフォンス・ミュシャゆかりの場所をご紹介します。

プラハのシンボル旧市庁舎から「ミュシャ美術館」へ

プラハのシンボル旧市庁舎の時計塔。image by:石黒まり花

まずはプラハの中心地である旧市街広場からスタートします。プラハのシンボルでもあるのが、15世紀に建てられたゴシック様式「旧市庁舎」です。この時計塔前は、毎時0分に動くからくり時計を見る人でいつも大にぎわい。

黒い尖塔が印象的なゴシック様式の「ティーン教会」、クー ポラと鐘楼があるバロック建築の「聖ミクラーシュ教会」や「プラハ城」までを見渡せます。エレベーターで登れる展望台があるので、ぜひ登って上からプラハの景色を楽しんでみてください。

旧市庁舎から見る「ティーン教会」image by:石黒まり花

19世紀末に、アール・ヌーヴォーの旗手として名を馳せたのが画家アルフォンス・ミュシャ(ムハ)です。通称・ミュシャの名で知られている彼は、華やかで柔らかな女性の絵が有名ですよね。

その「ミュシャ美術館」が、旧市街広場から徒歩で約15分くらいのところにあります。

「ミュシャ美術館」の窓に展示されているイラストは撮影可能です。image by:石黒まり花

ミュシャはフランスで活躍していたのですが、祖国であるチェコに戻ったあとも、多くの作品を残しているんですよ。あまり大きくはない美術館ですが「あ!見たことある!」という絵画やポスターなどがたくさん。

同所では、時代とともに変わっていった作風の変せんも分かりやすく説明されていて楽しめます。ただし、撮影は不可ですのでご注意くださいね。

ミュシャが手がけた市長の間が残る「市民会館」

「市民会館」image by:Eniko Balogh/Shutterstock.com

2カ所目のミュシャゆかりの場所は、旧市街広場から徒歩で約5分。ミュシャが手がけた「メイヤーズ・ルーム(市長の間)」のある、アールヌーヴォ様式の「市民会館」。


内部を見学するには、有料のガイドツアーに参加が必須で、写真撮影も別料金です。このツアーは基本的に英語ですが、日本語のガイド冊子を貸してくれますのでご安心を。

もともとは歴代の王宮があった場所ですが、17世紀後半に焼失してしまい、1911年に市民会館に生まれ変わりました。チェコの国民的な作曲家であるベドルジハ・スメタナにちなんで名づけられ、プラハの国際音楽祭が開催される「スメタナ・ホール」も入っています。

第二次世界大戦後は荒廃していたものの、ビロード革命後に大修復工事が行われ、本来の姿が蘇りました。

メイヤーズ・ルームは、天井や壁の絵、柱の彫刻、ステンドグラス、カーテンの刺繍までミュシャが手がけた部屋で、紫を基調としたステンドグラスがあしらわれていて神秘的な雰囲気です。

フレスコ画『スラブの団結』には、スラブ民族の人々の営み、空の中央には翼を盾にして人々を守る大きなワシが描かれています。

フレスコ画『スラブの団結』 image by:石黒まり花

天井を支える柱には、ヤン・フス等チェコの歴史的に重要な8人の人物画が描かれていて、その下には大きな3つの壁画を見ることができます。

『過去』image by:石黒まり花

暗い歴史の『過去』、立ち上がる『現在』、明るい『未来』というそれぞれに題がつけられていて、ミュシャは愛国心からチェコ民族を啓発する想いを込めて描いたのもなのだそう。私たちが知るミュシャの優しいイメージとは違う、青黒い色味の力強いタッチに圧倒されます。

『現在』image by:石黒まり花

ミュシャはこの仕事を受けた当時フランスにいたのですが、祖国チェコへの愛国心が強く無償で引き受けたそうです。

『未来』image by:石黒まり花

プラハ城の「聖ヴィート大聖堂」に残るステンドグラス

「聖ヴィート大聖堂」image by:Shutterstock.com

3カ所目のミュシャゆかりの場所は旧市街から「カレル橋」を渡り、徒歩で約25分ほどかかりますが、世界で最も古くて大きな城といわれる「プラハ城」です。

敷地内に入るのは無料ですが手荷物検査があります。城内にある82メートルの2本の塔と、99メートルの鐘楼を持つ、チェコで最も大きくて荘厳なゴシック様式の「聖ヴィート大聖堂」。その聖堂内に、ミュシャ製作ステンドグラスがあります。

大聖堂に入るのは無料ですが、ミュシャのステンドグラスを正面から見るにはチケットの購入が必要です。

ミュシャのステンドグラス。image by:石黒まり花

天井の高さは34メートル、幅60メートル、奥行き124メートルの大空間が広がる聖堂にステンドグラスがいくがありますが、ミュシャによるステンドグラスは、左の回廊入り口から数えて3番目です。真ん中の赤い服を着たチェコの守護聖人・聖ヴァーツラフは、ミュシャの息子であるイジーがモデルだそう。

聖ヴァーツラフにスポットライトが当たっているように見えるように、デザインや色使いが計算されていて、中心部は暖色を使用し、周辺部は寒色を使用しているとのこと。

よく見るとステンドグラスの下部には、スポンサーであった「BANKA SLAVIE(スラビア銀行)」の飾り文字が入っています。この美しさはきっと一生の思い出に残ること間違いありません。

プラハといえば、旧市街広場に建つ旧市庁舎やカレル橋が有名ですが、ほかにも見どころは数多くあります。なかでも今回はミュシャゆかりのスポット3カ所をご紹介しました。

華やかで柔らかな女性の絵だけではなく、チェコの民族のために描いた強さを感じるフレスコ画や壁画。そして優しい色合いのなか、どこか穏やかな気持ちになるステンドグラス。これらの作品からミュシャのさまざまな一面を見ることができるのではないでしょうか。

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元々インドア派だったはずが『恋する惑星』でウォン・カーウァイにハマり、初めての一人旅は上海へ。カメラ片手にどこへでも行くアクティブ旅女子になりました。現在は大学院に通いつつフリーライターとして、旅・アート・美容・ファッションをメインに活動しています。

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