好き、だけど苦しい。頑張る理由を失った私の「仕事」からの逃避行

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2020/07/11

えっと、私って、一体何のために働いているんだっけ…。ある日突然、立ち止まってしまった。

文章を書く、いわゆるライターの仕事をしている私は、起きているほとんどの時間をPC画面と向き合って過ごしている。

それはなぜか?仕事が好きだからだ。ブラック企業に勤めているわけでもなく、誰かにやらされているわけでもない。とにかく文章を書くことが楽しくて、ライターという職についてから丸三年間、私は走り続けていた…はずだった。

実際は少し違っていて、本当は、「走り続けることしかできない」でいたのだ。立ち止まることが怖くて、仕事をしていない時間が不安で仕方がなかった。

毎日毎日毎日、見えない敵のような「誰か」…それはクライアントなのか、担当の編集者なのか、同業者なのか。はたまた未来の私自身なのかもわからない。その「誰か」にずっと追われているような気がしていて、ちょっとでも足を緩めてしまったら、その誰かに追いつかれて置いてきぼりにされてしまいそうで。

この原稿がボツになったらどうしよう。PV(ページビュー)数を取れなかったらどうしよう。「来月はもういいです」といわれたら、どうしよう。

そんな不安を少しでも薄めてくれることが、ただただ仕事をすることだった。だから私は、休むことを放棄してひたすらキーボードを叩き続けた。

それなのに、あの日私は、立ち止まってしまっていた。

仕事を理由に、私は旅行を断った

image by:Ned Snowman/Shutterstock.com

まだ新型コロナウイルスの影響がほとんど出ていなかった、2020年2月上旬。暖冬といわれていた今年はやはり例年に比べると暖かく、過ごしやすい冬だった。きっと多くの人が冷たい風に凍えない冬に、ほっとした毎日を過ごしていたことだろう。


しかし私の周りには、続く暖冬に心穏やかでない人たちがいた。それが、大学時代の友人たち。私が大学4年間所属していた、スノーボードサークルの仲間だった。

“スノーボードサークル”と聞いて、いわゆる大学生の“チャラさ”のようなものを思い浮かべた方も少なくないはずなので、念のため訂正しておきたい。

私が所属していたサークルは冬の期間の8割を雪山で過ごし、アルバイト代のほとんどすべてをスノーボードに注ぎ込むような人ばかり。リフトの上で女の子を口説くくらいなら自分の滑りをチェックしたい、言葉を選ばずにいうと“スノーボードバカ”の集団だ。

社会人になっても忙しい合間を縫ってスノーボードをしに北上しているような彼らから、今回2月の三連休を利用して「OB合宿」を開催すると、連絡が入った。

「行こうよ」と声をかけてもらっても、仕事に追われる私が二泊三日の旅になど到底行けるはずがなく、断ることに。行きたい気持ちもなくはなかったが、行く方が怖かった。3日間もPCを開かない自分を想像するだけで、焦燥感で気が狂いそうになる。

あと…そんな風に「仕事を理由に断る」なんてちょっとかっこいいじゃん、なんて思ったりもして。そうやって、自分をどうにか納得させていたのだ。

そうして暖冬も関係なく、今年の冬は終わっていくはずだった。しかし2月中旬になって、私は突然、何もできなくなってしまった。

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