好き、だけど苦しい。頑張る理由を失った私の「仕事」からの逃避行

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2020/07/11

私を解放し、救ってくれた先輩の一言

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久しぶりに再会する友人たちは、あのときと全然変わっていなくて、でもみんなちゃんと大人になっていた。結婚をした人もいれば東京で活躍している人もいる。「仕事辞めたいねん」なんていいながらも、楽しそうにしている人もいて。

何だか私だけ、少しも成長できていないような気持ちになってしまった。みんな、何かに向かって生きているのに、私は仕事を頑張る目的さえ見失ってしまっている。

「せっかく来たのに失敗だったかな…」

投げ捨ててきた仕事のことも気になり始め、そんな風に思ってしまう自分も現れていた。

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半ば後悔のような気持ちを抱えながらリフトの上で雪山を眺めていると、隣に座っていた先輩が嘆くように、言葉をこぼす。

「学生時代のこと、思い出すよな。なんかタイムスリップしたみたい。まあ、火曜日からはまた、大変な現実に引き戻されるけどな」

先輩は笑いながら、でもちょっと本気で悲しそうに、ポツリと話す。ゴーグル越しで目が見えなくても、声から感情が、しっかりと伝わってきた。

その瞬間、私の心と体を縛っていたモヤモヤみたいなものが、スッと消えたのだ。フワッと、体が軽くなった。

私だけじゃない。みんな一緒だ。


みんな、生きていく意味や働く目的を必死で探しながら、毎日を過ごしているんだ。きっとみんな、何か得体の知れないものに追いかけられながら、息を切らしているんだ。

なんだ、みんなかっこいいじゃないか。っていうか私も、かっこいいじゃん。

そんな風に思ったら急に楽しくなってきて、普段はPCと睨めっこしているせいで遠くの景色なんて見ていなかったことに気付いたり、その瞬間だけ盛り上がって明日には消えているような“無駄な話”が最高に楽しかった、あのころを思い出したり。

意図的に排除していたこの“どうでもいい、何にもならない時間”が、私にとって何よりも必要としていたものだったのだ。

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もう、投げ捨ててきた仕事も怖くない。だって、また帰っていちからやればいいのだから。もう、仕事だらけの毎日も怖くない。だって、そんな私はかっこいいのだから。

もう戻らないけれど、ちょっと昔の私の一瞬一瞬が、いまの私が頑張る理由を作っている。きっといまの、何かと戦いながらもがき苦しんでいる私も、未来の私が頑張る理由になるのだろう。

立ち止まってしまって動けなくなったら、進もうとするのは辞めて、あえて逆戻りしてみる。頑張っている人ほど、勇気のいる行動かもしれない。

けれど、また同じ場所に戻ってきたときには、前よりちょっと自分がかっこよく見えるはず。私にとっての「仕事から逃避行」は、そんな自分を認めてあげられるようになった大切な旅だった。

 

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フリーランスのライター・インタビュアー

大学卒業後、勢いでフリーランスとして独立。ウェブメディアを中心に、インタビューやイベントレポート、小説・エッセイ連載など様々な媒体で執筆、脚本を行っています。小説をエンタメだけでなく情報を伝える手段にするべく、日々奮闘中。
その人や商品、企業の魅力を、私の文章でより多くの方々に伝えたい気持ちを胸に日々活動しています。

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