好き、だけど苦しい。頑張る理由を失った私の「仕事」からの逃避行
私って、何のために働いているんだろう?
ふと、そんな疑問を持ってしまった。それもそのはず、私が働く理由は焦りからくる恐怖心だったのだから。そんなものは、前向きに働き続ける原動力にはならない。
書きたいものは何もなくなり、書かなければならないことさえも浮かばず、蓄積されていくのは何もできないことに対する焦燥感。
あ、やばい。このままだと私、この仕事のこと嫌いになりそう。そう思った。
だから、逃げよう。みんなと一緒に雪山へ。
すぐさまスマホを取り出し、OB合宿の幹事に連絡する。出発までもう1週間を切っていたけれど、行くと決めたのだからなんとしてでも行くつもりだった。それほどまでに、私は逃げ出したい衝動に駆られていたのだ。
人数はオーバーしていたが、なんとかねじ込んでもらうことに成功。ここからようやく、逃避行がスタートした。
すべての連絡手段を絶って向かった、新潟県
いよいよ出発の日。私は、大阪に向かう最終電車に揺られていた。友人と大阪で落ち合い、新潟県・妙高高原まで車で向かう予定だった。そうやって卒業と同時に散り散りになった元サークルのメンバーが、全国各地から夜な夜な運転し、早朝、現地で合流するのだ。
アルコールで頬を赤らめた人たちの匂いが充満する電車で、私はひとり、高揚感で頬を赤く染めていた。
そしてポケットからスマホを取り出して、ある作業を開始する。
連絡ツールであるSlackやChatwork、PatureそしてGmailに至るまで、仕事関係のすべてのアプリを削除した。文字通り、淡々と。そうでないと、時折顔を出す不安に押し潰されそうになるから。
いくら仕事から逃げ出したとはいえ、どうせ私のことだから隙を見て仕事のチェックをしてしまうだろう。だから、連絡手段そのものを物理的に絶ってやった。でもちょっと、ドキドキしながら。
普段仕事以外ではほぼ使われていない私のスマホは、仕事のアプリを削除されるとなんだか頼りない。そして私を私たらしめている仕事をたった3日間だが手放すとなると、私は何だか空っぽのような気がして、武器を失ったような、ひとまわり小さくなったような、心許ない気持ちでいっぱいになっていた。