埋まらない1ミリの距離。私はこれから、元恋人と「最後のデート」へ行く

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2020/07/25
image by:Shutterstock.com

「どうしたん?」

立ち止まった私に気付き、彼が声をかけた。いまだ。いましかない。いますぐ走り出そう。そう思っていたはずなのに、私は結局、動かなかった。

「あ、スマホなくしたかと思ってんけど、あったわ。ごめんごめん」

笑えていただろうか?彼と別々に乗った電車。手を繋いで、1ミリの隙間を埋めて、恋人の距離で話すカップルを見て私は小さく泣いた。

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思い返すと、あのときの決断は正しかったのだとおもう。私が前へ進むために必要だったのは、“寂しさ”を埋めてくれる人ではなく、未来を信じて自分の意志を貫く“強さ”だったのだろう。それこそ、愛した彼の強さのように。

あのゲートを出る直前に求めていたのは、彼自身ではなく、彼と過ごした甘い時間そのものだった。自分を肯定してくれる恋人という存在を手放すのが惜しかった。

優しい彼と恋人関係を再開していたら、さらに傷つけることもわかっていた。それでも手を伸ばそうとした。そんな私のなかの小賢しい部分が、寂しさだったのかもしれない。

男の恋は別名保存、女の恋は上書き保存。そんなもの関係ない。私は苦くてちょっと甘くてずるくて綺麗なこの恋の記憶を、ずっとずっと大切にしていきたいと思っている。

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  • ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
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フリーランスのライター・インタビュアー

大学卒業後、勢いでフリーランスとして独立。ウェブメディアを中心に、インタビューやイベントレポート、小説・エッセイ連載など様々な媒体で執筆、脚本を行っています。小説をエンタメだけでなく情報を伝える手段にするべく、日々奮闘中。
その人や商品、企業の魅力を、私の文章でより多くの方々に伝えたい気持ちを胸に日々活動しています。

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