潜入!時代劇の灯をつなぐ松竹撮影所の舞台裏

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2020/12/19

変幻自在な劇中世界が広がる、オープンセット&ステージへ!

時代劇の撮影はおもに撮影所内のオープンセットまたはステージと呼ばれる屋内セットで行われます。つまり、画面に登場するほとんどが“作り物”なのですが、そうは感じさせないリアリティがありますよね。そんな劇中の世界を今回特別に見せていただくことができました!

撮影所の運営に携わるスタジオ事業室長の近藤るみ子さんの案内で、まずはオープンセットのエリアへ。一歩足を踏み入れた瞬間、江戸時代にタイムスリップしたかのような錯覚に陥ります!

お祭りシーンなど活気あるまちのようすが描かれる「広場」の先には、これまた時代劇でおなじみの「橋」がお目見え。画面上は本物の川が流れているように見えますが、実際は「堀端」と呼ばれる人工池でした!あるときは荷上場に、またある時は事件現場になったりする名脇役的スポットです。

通りかかった家の中をのぞくと、米俵がぎっしり!中が映らない場合は、小道具や備品を納めておくことがあるそうです。「米俵、担いでもいいですよ」という近藤さんのお言葉に甘え(?)、気合いを込めて持ち上げた瞬間、腰が抜けそうになりました。軽すぎてっ!

「俵自体はワラでできていますが、中は発泡スチロールなどの軽い素材を使っています。それをいかに本物の米俵らしく見せるかが役者の腕の見せどころです」。

なるほど、たとえ通行人の役であっても道具の持ち方や仕草で「役」を演じきらなければならないのですね。普段、何気なく目にする役者さんの演技の奥深さを体感しました。

長屋(上)と大店(下)が建ち並ぶ対照的な2つの通り

広場の両サイドへ回り込むと、雰囲気はガラリと変わります。一方は見るからに庶民的な「長屋通り」、もう一方は立派な家々が建ち並ぶ「大店通り」、また別の方向へ進むと、茅葺き屋根の「農家」や豪壮な造りの「奉行所」が出現!まさに江戸時代を凝縮した町や村の集合体です。

奉行所(上)と農家(下)が目と鼻の先に。所内にいながら、設定の異なるさまざまなシーンを撮影することができます

「その都度セットの内装や外装にアレンジを加えて、いろいろな作品・シーンに対応できる造りになっています。例えば、『奉行所』がお寺や道場になったり、『大店通り』が遊郭になったりもするんですよ」と近藤さん。

オープンセットの使い勝手の良さもさることながら、それらを見事に活かし切る美術チームの再現力にも驚かされました。


オープンセットとともに大きな役割を果たすのが、屋内撮影用の「ステージ」です。京都の松竹撮影所には全6棟のステージあり、時代劇のほか、現代劇やCM撮影などにも幅広く活用されているそうです。そのうちの一棟に時代劇のセットが組まれていると聞き、中をちょっぴりのぞかせていただきました。

外からは何の変哲もない倉庫に見えるのですが、中には武家屋敷風の立派な建物が!ただ、オープンセットの建物とは違い、屋根や天井が付いていません。

必要に応じて天井を取り付ける場合もありますが、こうしておくと音声やカメラ、照明といった機材の配置がスムーズにできるという利点があります。

セットの上にはキャットウォークがめぐらせてあり、機材の操作や演出に活用されています。画面の外側のうかがい知れないところで、役者さんを引き立たせるさまざまな工夫が凝らされているんですね。

足下に目を移すと、一面土に覆われた「土床」です。雨を降らせたり、中庭を設けたりしやすいように、所内のステージはすべて土床で統一しているそう。

アスファルトなどがなかった時代を描くので、そのほうがよりリアルに表現できるからです。これから時代劇を観るときは、そのあたりにも注目してみてくださいね!

時代劇を背負って立つ俳優の学び舎・松竹アクターズスクール

屋内セットの見学を終えて歩いていたところ、別のステージの中から何やら威勢のよい声が。近藤さんは「殺陣のレッスンが始まったようですね。当所では、時代劇俳優を育成する『松竹アクターズスクール』を開講しているんですよ」と、ステージ内へ案内してくれました!

か、かっこいい……!刀の構え方といい、身のこなしといい、みなさんレッスン生とは思えないほど様になっていて、思わず見惚れてしまいます。斬り役と斬られ役の息がぴたりと合ってこそ殺陣のシーンが成り立つのだと、レッスンのようすを見て気づかされました。

アクターズスクールには現在20代から80代まで、約50名の生徒さんが在籍しているそう。殺陣の基本動作を学ぶレッスンのほかに、着物の着付けや所作、演技、発声方法などを基礎から学ぶ実技中心のレッスン、時代劇の成り立ちや役づくりについて学びを深める座学のレッスンもあるという中身の濃さ!講師陣は時代劇製作の第一線で活躍中の映画監督や俳優といったプロの方々ばかりです。

殺陣の指導にあたる殺陣師の中村健人先生。カメラの前でかっこいいポーズを決めてくださいました

この日、殺陣を指導していた中村健人先生は、かの有名なハリウッド映画『ラストサムライ』をはじめ数々の時代劇で活躍されているアクションディレクター。

スタントマンを経て殺陣師の道へ進み、故郷の京都で殺陣をはじめとする時代劇アクションの技と感性を磨いてきたそうです。そんな中村先生に“時代劇の魅力”をうかがいました。

「史実と空想を織り交ぜたフィクションだからこそ、自由な発想やSFチックな要素を加えられるところでしょうか。例えば、忍者が屋根から飛び降りるシーンでクルッと一回転して着地したりしますよね。現代劇でそんな降り方をしたら不自然だけど、時代劇なら違和感なく受け入れられます。伝統的なようで、実は自由度の高いジャンルなので、これからも面白い作品がどんどん出てくると思います」

さらに、レッスンを終えたばかりの生徒さんにもお話を聞くことができました!2013年のスクール発足当初から受講している小澤明弘さんです。

俳優部期待の星、小澤明弘さん。すでに殺陣の基本をマスターし、レッスンではアシスタント的な役割を果たしています

小澤さんは現在、松竹撮影所内の俳優部に所属し、映画やドラマの出演機会を得ています。つい先頃BS-TBSで放映された池波正太郎原作の時代劇『上意討ち』では、念願のクレジット付きでの出演を果たした若手のホープです!

俳優を志して入学したのかと思いきや、「時代劇にちょっと興味があっただけ」という意外な答え。しかし、レッスンを重ね、エキストラとして現場の空気に触れるうち、俳優を生業にしたいと思うようになったそうです。

「22歳で会社を辞めて、特にやりたいこともなかった僕が、こんな風に変われるなんて自分でもびっくりです(笑)。スタジオの中で学び、撮影現場で実践し、一流の役者さんの演技を間近に見ることもできる、こんなに恵まれた環境はなかなかないと思います。俳優志望でないかたにとっても大変刺激になると思うので、興味のあるかたはぜひチャレンジしていただきたいです!」

時代劇の未来を見据えたアクターズスクールの取り組みも、松竹らしい「融合と挑戦」と言えるかもしれません。この先どんな作品が生まれ、どんな進化を遂げていくのか、ワクワクしますね!

その間に過去の名作に触れて、時代劇の面白さを再確認したいものです。年末年始のおうち時間に時代劇鑑賞、いかがでしょうか?

■■■INFORMATION■■■

(株)松竹撮影所 京都製作部
住所:京都市右京区太秦堀ヶ内町12-9
公式ホームページ

【スクール案内】

◎ただいま2021年2月生を募集中!
松竹アクターズスクール
開講日:毎週土曜(90〜120分)※内容は週によって変わります
料金:入学金10万円(分割可)/月謝1万6,000円
お問い合わせ:075-864-8602(京都製作部スタジオ事業室)
school2@shochiku-ks.com

  • source:KYOTO SIDE
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
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