バブル期の日本と変わらない?オトナの階段をのぼるアメリカ学生寮のリアル
バブル期の日本と比較すると…?
私自身は日本がバブル経済で舞い上がっていたころに、慶應義塾大学に通っていました。
時代背景からいっても、大学の名前からいっても、日本史上最も経済的に恵まれた大学生活だったはずなのですが、私が新入生のころに半年ほど住んだ学生寮は、それは、それは、汚いものでした。
そのころから日本では学生寮も個室になっていましたが、まるで話に聞く刑務所の独房を彷彿させるような狭苦しい部屋(ベッドと机と洗面台しかない)を一歩出ると、廊下には古雑誌やカップラーメンやビールの空きビンが散乱し、共同トイレの臭さと汚さは筆舌に尽くしがたいものでした。ご要望があるなら尽くしてみてもよいのですが、率直にいって、思い出すだけでも不快な気分になります。
私はその学生寮に耐え切れず、外にアパートを借りましたが、生活レベルそのものは大きく変わりませんでした。6畳の部屋でカップラーメンをすすって、灰皿代わりにした空き缶にはタバコの吸い殻がくすぶっている。そんな雰囲気です。
けっして自己弁護するわけではありませんが、そんな生活を送っていたのは私だけではありません。私と同じように一人暮らしをしていた友人たちの部屋も多かれ少なかれ似たようなものでした。
「失われた30年」という言葉に象徴されるように、日本経済はバブルの終えん以来ずっと停滞しているとはよくいわれることですが、私にはどうもピンときません。
少なくとも学生生活に関しては、日本が豊かだった時代はもともとなかったのでは?と個人的には感じています。
バブル時代以前に遡ってみても、北杜夫著の『どくとるマンボウ青春記』を読んでも、村上春樹著の『ノルウェイの森』を読んでも、日本の学生寮とは歴史的にずっと乱雑で不潔な場所だったようです。現在はどうなっているのでしょうか。
学生寮でしか経験できないこと
日本とアメリカの違いがあっても、時代が変わっても、清潔であっても不潔であっても、寮生活の本質とは他人と生活を共にすることです。
当然ではありますが、合う人も合わない人もいるようです。私の息子が住んだほんの数カ月間でも、寮内でケンカ騒ぎや警察沙汰になった事件も起こりました。
アメリカでは高校までが義務教育ですので、ほとんどの学生は大学生になって初めて地元のコミュニティ以外の世界から来た学生たちと交流することになります。
従って、割り振られたルームメイトと必ずしも気が合うとは限りません。互いに違和感を抱くことや、ときには誤解が生じることも避けられません。
それでも、狭い寮の中では嫌でも毎日顔を合わすことになります。私の息子には、異なるバックグラウンドの他人を尊重し、コミュニケーションをとることを、寮生活の中から身をもって学んでくれるのではないかと期待しています。
なぜなら、それは親がいくら家庭の中で教えたくても教えることができないことだからです。私自身はもう、そうしたことを学ぶのは長年の結婚生活だけで十分ですけど。
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