近代歴史を偲ぶ―舞鶴の赤レンガを支えた「神崎煉瓦ホフマン式輪窯」
貴重な近代遺産を未来へつなぐ
現在、予約制で公開されている神崎煉瓦ホフマン式輪窯ですが、このように一般に公開されるまでには紆余曲折がありました。最盛期には従業員が100人もいた工場ですが、需要の減少と共に昭和33(1958)年、幕が下ろされます。
その後、持ち主が変わりコンクリート会社となりました。そのため文化財的な名称は、神崎コンクリート株式会社旧煉瓦窯(旧京都竹村丹後製窯所煉瓦窯)となっています。
そのコンクリート会社も閉鎖となり、広大な土地は競売に出されることになります。しかし何年も放置されていたた土地は草に埋もれ、平成15(2003)年、3回目の入札でやっと落札者が出現。それが舞鶴市の髙橋博さんでした。髙橋さんは財団法人 舞鶴文化教育財団の理事をされておられましたが、財団としてではなく、あくまでも個人所有としての落札でした。
ゆえに髙橋さんも、まさかこの草山の中にこのような歴史的価値がある遺構があるなど夢にも思っていません。
高橋さんの落札から遡ること平成2(1990)年、舞鶴市の非営利活動法人 赤煉瓦倶楽部舞鶴のメンバーがこの土地の調査をしており、ここにホフマン輪窯があることを突き止めていたそうです。
土地の新たな所有者が決まったことを知った赤煉瓦倶楽部舞鶴は、髙橋さんに保存を依頼。早速、土地全般の整備をすると雑草の中から神崎煉瓦ホフマン式輪窯の全貌が現れたのです!
これにより舞鶴文化教育財団が神崎煉瓦ホフマン式輪窯の修復と運営を受け持つ事となり、平成19(2007)年に近代化産業遺産に指定。
平成22(2010)年には国、京都府、舞鶴市、学識経験者、神崎ホフマン窯保存推進協議会(市民団体)らによる、国登録有形文化財(建造物)神崎コンクリート株式会社旧煉瓦窯(旧京都竹村丹後製窯所煉瓦窯)保存修理検討委員会が結成され、調査工事を経て保存修復工事がスタートしました。
保存修復作業としては砂地に立っていることから窯全体を補強し、倒壊を防ぐために高さ24mの大煙突を始め11本の煙突を短くし、風雨を阻止する覆い屋を設営。
また、窯の崩落部分はそのまま見学スペースとして活用することにし、平成25(2013)年に一部をのぞいて完成。平成28(2016)年には日本遺産に認定されました。
神崎煉瓦ホフマン式輪窯で焼かれたレンガを見る
さて、せっかくならば神崎煉瓦ホフマン式輪窯製のレンガを使った建物を見てみたいと思ったのですが、実は、ここで作られたレンガがどこで使用されているのかは厳密には不明なのです。
というのもレンガには写真のように製造工場の刻印が押されますが、神崎煉瓦ホフマン式輪窯で作られたレンガには刻印がありません。しかも会社が閉鎖されて随分、時が経っているので資料が残っておらず確かなことは不明なのだとか。
でも刻印が無いということは、もしかしたら軍の極秘の場所で使われていたのかな、なんてちょっぴり空想&妄想が広がったりもします。
確実に神崎煉瓦ホフマン式輪窯製のレンガを使っていると判明しているのが、工場すぐ側に立つ湊十二社の「手洗所」。明治 36(1903)年に創業者の竹村氏らにより奉納された美しいレンガ造りの建物です。
井戸の内側には「京都新町五条 竹村藤兵衛 東京田所町 薩摩治兵衛 京都深草 山田宗三郎」と刻まれているそうで、実際はこの3人の共同経営だったことが伺えます。
柱や角は丸く面取りされ、壁に透かしを設けるなど意匠が凝らされていてオシャレなんですよ。
また、舞鶴市内にある「赤れんが博物館」では神崎煉瓦ホフマン式輪窯を再現したコーナーや模型、レンガも展示されています。製造方法なども紹介されているので、神崎煉瓦ホフマン式輪窯の見学と合わせて訪れてみてはいかがでしょう。
神崎煉瓦ホフマン式輪窯を見学するには
現在、神崎煉瓦ホフマン式輪窯は常時公開を行っていないため事前予約が必須です。見学を希望される方は財団へお問合せを。ただし、スケジュールにより見学希望に対応できない場合ありますので、ご了承ください。
参考資料
『神崎煉瓦ホフマン式輪窯』公益財団法人 舞鶴文化教育財団/『若狭湾国定公園内 国登録有形文化財 近代化産業遺産 神崎煉瓦ホフマン式輪窯』
■■INFORMATION■■
公益財団法人舞鶴文化教育財団
住所:京都府舞鶴市森町16番地11高橋ビル7F
TEL:0773-62-0577
神崎煉瓦ホフマン式輪窯
住所:京都府舞鶴市西神崎918
見学料:300円
赤れんが博物館
住所:京都府舞鶴市字浜2011
TEL:0773-66-1095
時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
定休日:12月29日~1月1日
入館料:大人400円/学生(小学~大学)150円※ただし、市内在住か在学の学生は無料
- source:KYOTO SIDE
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