韓国を、もっと知りたい。文化が生まれた古き良き「百済」への旅

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2023/08/06

日本とゆかりが深い隣国「韓国」。音楽やドラマ、ファッションやコスメなど、あげたらきりがないほど、関わりの深いカルチャーを持つ国のひとつです。

その歴史を紐解くと、飛鳥・奈良時代にさかのぼります。よく知られるのが、日本史で学ぶ「白村江の戦い」(663年10月)です。

この舞台は昔の百済(くだら・ひゃくさい/ペクチェ)、現在の忠清南道(チュンチョンナムド)にある「扶余(フヨ・プヨ)」でした。扶余は、百済最後の王都があった場所です。

公州韓屋村と公州市のマスコットキャラクター。image by:シカマアキ

忠清南道には、百済の遺跡など、当時の面影を感じられる場所がいまも点在。

近年、ご当地グルメや新たな観光スポットなども登場し、韓国内でも話題となっています。今回は、ソウルから行く忠清南道の旅、その見どころをご紹介します。

百済の王都は3カ所、うち2カ所が忠清南道にある

「国立公州博物館」image by:シカマアキ

忠清南道は、韓国の中西部に位置しています。道内で最も大きな都市は、大田(テジョン)広域市

朝鮮の三国時代で知られる国、高句麗・新羅・百済。その「百済」は、3カ所に王都を置きました。

なかでも、地方の公州(コンジュ)や扶余は、日本とゆかりが深い場所です。

  • ・漢城(ハンソン、現在のソウル)
  • ・熊津(ウンジン、現在の公州)
  • ・泗沘(サビ、現在の扶余)

2番目の王都「公州」では山城や王の古墳、国立博物館など

ユネスコ世界遺産の公州「公山城」image by:シカマアキ

熊津(現在の公州)には、475年から538年まで5代64年間、都が置かれました。


主な観光スポットは「公山城」「宋山里古墳群」「武寧王陵」「麻谷寺」「国立公州博物館」など。韓流ドラマの聖地として名前を聞いたことがある人もいるでしょう。

公山城は、かつて「熊津城」と呼ばれた百済時代の王城。標高110mの公山の稜線に沿って城壁があり、城のすぐ近くに錦江(クムガン)が流れ、まるで要塞のような山城です。

復元された城門や建物、推定王宮地などが見学できます。歩いて登るのでスニーカー必須です。

2015年、「百済歴史遺産地区」としてユネスコの世界文化遺産に登録されました。

公州にある「宋山里古墳群」と「武寧王陵」image by:シカマアキ

宋山里古墳群は、百済中期の古墳群です。1971年7月、偶然発見された墓が百済25代の武寧王と王妃の合葬であることがわかり、大ニュースに。

この武寧王陵から金銀製の装身具や中国ゆかりの遺品などが多数見つかりました。

現在は、百済文化の貴重な史料として、国立公州博物館などに展示されています。

百済第25代の王様「武寧王」。image by:シカマアキ

麻谷寺は、公州の中心部から車で約30分。640年に新羅の善徳女王から土地を寄進されて創建された古寺です。

再建と荒廃が繰り返された後、18世紀に現在の伽藍が整備されました。

仏画で多くの画僧を輩出し、春や秋の美しい光景でも有名。2018年に「山寺、韓国の山地僧院」としてユネスコ世界文化遺産登録されました。

ユネスコ世界遺産の麻谷寺 image by:シカマアキ
  • 公山城
  • 公州市熊津路280
  • 入場料:大人3,000ウォン/中高生2,000ウォン/子ども1,000ウォン
  • 定休日:旧正月/秋夕(チュソク)
  • 営業時間:9:00~18:00
  • ウェブサイト
  • 宋山里古墳群・武寧王陵
  • 公州市王陵路37
  • 入場料:大人3,000ウォン/中高生2,000ウォン/子ども1,000ウォン
  • 定休日:旧正月/秋夕(チュソク)
  • 営業時間:9:00~18:00(11~2月 17:00) ※入場は閉業30分前まで
  • ウェブサイト
  • 国立公州博物館
  • 公州市観光団地ギル34(熊津洞360番地)
  • 入場料:無料
  • 休館日:毎年1月1日/旧正月/秋夕/毎週月曜日
  • 営業時間:10:00~18:00(土日祝~19:00)
  • ウェブサイト

公州は「栗」が名物!韓屋村のオンドル体験もおすすめ

公州は栗のスイーツが人気。image by:シカマアキ

公州は「」が有名。栗パン、栗餅、栗ラテなどのスイーツのほか、「栗マッコリ」も名産品です。

韓国全土から食べに来る旅行者も多数。筆者のおすすめは、注文してから栗のクリームを入れてくれるパイで、公山城の入口前に店舗があります。

栗を飼料に育てた韓牛の焼肉。これも公州名物。image by:シカマアキ

また、栗を飼料にして育てた公州の「韓牛(かんぎゅう)」は高級ブランド。

ご当地グルメには、炭火で焼くウナギ焼きに、山菜ビビンバや栗ユッケビビンバ、ピリ辛の公州ちゃんぽんにさまざまな味の公州カルグクスなどが挙げられます。冬には焼き栗祭りも開催。

公州韓屋村。1棟貸しの宿泊施設もある image by:シカマアキ

公州に滞在するなら、2010年9月にオープンした「公州韓屋村」がおすすめ。団体宿泊棟と個別宿泊棟があり、伝統的なオンドル部屋が体験できます。

客室ごとにシャワーや洗面所なども完備。公州栗で菓子作り、百済の王室体験など韓国伝統文化が楽しめるプログラムも敷地内で行われています(有料)。

なお、ソウルから公州への行き方は、高速バスで約1時間半~2時間。KIX公州駅もあるものの場所が不便なため、中心部にターミナルがあり、本数も多い高速バスがおすすめです。


百済最後の王都があった「扶余」は白村江の戦いの舞台

扶余は、538年から660年の期間、百済が滅びるまで約120年都が置かれた、最後の王都があった場所。中心部を流れる白馬江(ペンマガン、昔の白村江)をはじめ、今も百済が感じられるスポットが残っています。

公州と合わせ、扶余も「百済歴史遺産地区」として世界遺産登録されています。なお、公州の錦江は扶余では白馬江と呼ばれます。

扶余の官北里遺跡 image by:シカマアキ

「扶蘇山城(プソサンソン)」は、泗沘城として、中心部にある「扶蘇山」(標高106m)のふもとに造られました。山と川に囲まれて自然が防壁となり、砦でもありました。

扶蘇山の断崖に「落花岩」と赤文字で刻まれている image by:シカマアキ

その扶蘇山の断崖「落花岩」は、百済滅亡時に約3,000人の女官が身を投げたと伝わる悲劇の場所。また、「皐蘭寺(コランサ)」に湧き出る水を1杯飲むと3歳若返るという伝説もあり、旅行客に人気です。

定林寺址と五層石塔 image by:シカマアキ

中心部にある「定林寺址」(チョンニムサジ)は当時、百済の最も重要な寺院。現在、建物こそ残っていないものの、百済様式の伽藍配置跡などがあります。五層石塔(高さ8.33m)は当時から今もその姿のままそびえ立つ国宝です。

国立扶余博物館で見られる「百済金銅大香炉」 image by:シカマアキ

扶余時代の百済に関する展示を見るなら、「国立扶余博物館」へ。約25,000もの遺物を所蔵、その一部が時代ごとに展示されています。特に、百済時代の代表遺物で、香を焚くのに用いられた「百済金銅大香炉」は必見です。

宮南池のそばに2人をモチーフにした石像も image by:シカマアキ

「宮南池」(クンナムジ)は王宮の南に造られた池のある離宮で、毎月7月に蓮の花が一面に咲き誇ることで知られます。百済の武王(薯童、ソドン)と新羅の姫・善花(ソンファ)による伝説は、韓国ドラマ「薯童謠」(ソドンヨ)でも有名です。

  • 扶蘇山城・官北里遺跡
  • 扶余郡扶余邑官北里77
  • 入場料:大人2,000ウォン
  • 営業時間:9:00~18:00(11~2月 17:00まで)
  • ウェブサイト
  • 定林寺址
  • 扶余郡扶余邑定林路83
  • 入場料:大人1,500ウォン
  • 営業時間:9:00~18:00(11~2月 17:00まで)
  • ウェブサイト
  • 国立扶余博物館
  • 扶余郡扶余邑錦城路5
  • 入場料:無料
  • 休館日:毎年1月1日/旧正月/秋夕/毎週月曜日
  • 営業時間:9:00~18:00(土日祝19:00まで)
  • ウェブサイト

ロッテ扶余リゾートはアウトレットもある複合施設

水陸両用バスで白馬江(白村江)を遊覧するツアー image by:シカマアキ

白馬江は、錦江から黄海につながる大河で、日本や中国の交易拠点でもありました。以前から遊覧船が人気でしたが、これに加え、水陸両用シティバスツアーが2020年7月に登場。39人乗りのバスで川に入る瞬間は迫力満点です。

ロッテ扶余リゾート image by:カマアキ

扶余での宿泊で人気なのが、「ロッテ扶余リゾート」です。大型リゾートの客室、その大半はファミリー向けで広く、レストランやゴルフ場、プール、コンビニエンスストアなども併設。

さらに、ロッテアウトレット、百済の王宮などを再現したテーマパーク「百済文化団地」、百済の歴史専門博物館なども隣接しています。

蓮の葉ご飯は扶余名物。必ず食べたいimage by:シカマアキ

扶余の郷土料理「蓮の葉ご飯」(ヨニッパッ)もぜひ食べたいグルメ。さらに、蓮の花を使ったお茶を茶菓子の蓮花パンとともに楽しめるカフェもあり、お土産としても人気です。韓国では扶余のミニトマトが特に美味しいことでも知られます。

なお、ソウルから扶余には、直通で行ける高速バスが便利。所要時間2~3時間半ほどで到着します。

高度で華やかだった百済文化は今の韓流のルーツ!?

百済と縁あった日本の都市がパネルで紹介されていた image by:シカマアキ

当時、百済と日本との交流は多岐にわたり、仏教伝来をはじめ多くの関わりがありました。特に、韓国史上最も華やかだったと伝わる百済文化は日本に大きな影響を与えました。なかには、百済文化は今の「韓流文化の元祖」といった声もあります。

扶余は「蓮」が名物。蓮茶も楽しめる。image by:シカマアキ

1955年から毎年開催されている「百済文化祭」は、華麗で洗練された百済文化を現代で体験できるイベント。

2010年からは、百済文化祭を世界的な歴史文化祭として催すべく、10年に1度「大百済典」と称したビッグイベントを開催しています。

そして今年はコロナ禍以降13年ぶりに「大百済典」が開催される年。2023年9月23日(土)~10月9日(月)に開催されるので、興味のあるかたはぜひ現地を訪れてみてください。錦江(白馬江)を活用した水上マルチメディアショーや、IT先進国・韓国らしくデジタルを駆使した展示館など、見どころが多くあります。

  • 大百済典
  • 扶余:クドゥレ一帯/忠清南道扶余郡扶余邑白江路135、公州:錦江新官公園一帯/忠清南道公州市錦碧路368
  • ウェブサイト

日本や韓国の歴史に興味がある、また、韓流ドラマが好きという人にもおすすめの、忠清南道の旅。歴史遺産を訪ねつつ、グルメやショッピングもぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか。

  • image by:Shutterstock.com
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
  • ※掲載内容に一部誤りがあったため、修正しました(2023/11/1)
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ジャーナリスト・フォトグラファー。飛行機・空港、旅行、ホテル、グルメなどをメインに、国内外で取材、撮影などを行う。雑誌やWEB向けの記事、写真や旅行などのセミナー講師も務める。元全国紙記者。大阪在住。

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