奈良の世界遺産「興福寺」。超パワースポットの意外なご利益とは?

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2023/12/23

古都奈良は1300年以上の歴史を誇り、1998年に奈良市の8つの資産が「古都奈良の文化財」として、ユネスコ世界遺産に登録されました。そして、2023年は登録25周年を迎えました。

奈良で最も有名な世界遺産の1つ「興福寺」。五重塔でよく知られる。image by:シカマアキ

興福寺」は、710年の平城遷都とともに造営が始まり、平城京を見渡す春日山麓に位置しています。天平の美少年と謳(うた)われる「阿修羅像」や、猿沢池越しに仰ぐ「五重塔」は、古都奈良を代表する景観です。

また、「一言観音堂」に安置されている観音菩薩像は、昔から霊験あらたかな尊像として県内外から崇められています。

今回は、そんな「興福寺」の主な見どころを、定番から知られざるスポットまで詳しくご紹介します。

興福寺の起源は平城京以前、奈良時代の天平伽藍が今も感じられる

興福寺」の始まりは、天智天皇の御宇、平城京遷都の40年ほど前の669年に、重臣にあった中臣(藤原)鎌足が病を患い、夫人の鏡女王が回復を祈って山背国(やましろのくに)の鎌足私邸に建てた「山階寺(やましなでら)」です。

ちなみに、山背国は平安京遷都で「山城国」と改名されました。

猿沢池から望む興福寺五重塔など。古都奈良を代表する光景。image by:シカマアキ

そして、平城遷都に伴い、鎌足の息子で右大臣に昇格していた藤原不比等によって現地に移転され、興福寺と改号されました。

やがて国家の「四大寺」とされ、平安時代には朝廷の保護を受けて隆盛し、公家や貴族の間では興福寺を指す「南都」という言葉が生まれました。

興福寺の拝観者は日本人のみならず外国人も多い。さまざまな祈願を記した絵馬が奉納される。image by:シカマアキ

興福寺造営は藤原不比等による中金堂に始まりますが、不比等没後の伽藍(がらん)造営は国家事業として推進されました。


火災で幾度となく堂塔が焼失しますが、中世までは藤原摂関家に手厚い保護のもとに、復興されました。北円堂、三重塔、五重塔、東金堂の4棟が、国宝に指定されています。

平安時代からは神仏習合で春日大社を掌握するように一体化し、その寺社領は今の興福寺境内地の17倍以上もあり、現在、奈良公園地と指定されている大部分が、かつての春日社興福寺の領地でした。

興福寺のパワースポット「一言観音」とそのご利益とは

興福寺南円堂のすぐ北隣に「一言観音堂」がある image by:シカマアキ

南円堂のすぐ北側にある通称「一言観音堂」には、秘仏の十一面観音像と不空羂索観音像が安置され、一度にたくさんの願掛けをしてはいけないという信仰のもと、「一言観音」と総称されています。

一心に観音菩薩の名を唱えて祈るというのが一言観音の名称の起こりですが、次第に「一言だけお願いする」「願い事を一つにする」という信仰が生まれたようです。

何事も欲張ってはいけないと捉えることもできるでしょう。霊験あらたかな尊像として昼夜参拝者が絶えることはありません。

「家内安全」「病気平癒」「安産」「学業増進」「交通安全」「商売繁盛」などの祈祷が受け付けられています。来寧者はもちろん、地元の奈良町の人々にとっても早朝から気軽に参拝できる聖地として親しまれています。

一言観音堂は「南円堂の藤」のすぐ奥に位置する image by:シカマアキ

室町時代に「南都八景」の1つに数えられた「南円堂の藤」も堂前に植えられ、五月には藤花が開花して馥郁(ふくいく)たる香りに満たされます。

南円堂は4度の焼失と再建を経て江戸時代の1789年に再建された日本最大の八角堂で、重要文化財に指定されています。

また、毎年4月17日に一言観音堂で行われる放生会(生き物を放して功徳を積む法要)は、命ある生き物を大切にするという仏の教えにもとづいて、猿沢池に魚が放されます。

阿修羅像など貴重な寺宝を所蔵する「国宝館」にも見どころが

国宝館では興福寺が所有する国宝や重要文化財など貴重な所蔵品が見られる image by:シカマアキ

興福寺に伝わる国宝の数々も必見です。国宝に指定された仏像彫刻の10%が興福寺に所蔵されています。「国宝館」に安置されている日本一有名な仏像「阿修羅像」を目前にすれば、華奢な体でありながらも参拝者の誰もがその存在感に圧倒され、琴線に触れることでしょう。

五重塔」は、光明皇后の発願により730年に創建され、その後5度の火災に遭い、6度目となる現在の塔は室町時代に再建されました。

塔の高さは約50.8mで、現存する日本の木造の塔では2番目の高さを誇り、8番目の古塔となります。猿沢池にその雄姿を映す五重塔の景観を、この機会にぜひとも拝観しておきたいものです。

五重塔の隣にある「東金堂」(左下)。このエリアは現在工事中。image by:シカマアキ

東金堂」の本尊・薬師如来像は、人々の災いや苦を除き、病気の治癒や延命、楽を与えて正しい道を歩むことを導くとされます。

聖武天皇が伯母にあたる元正天皇の病気平癒を願って、即位から2年後の726年に建立されますが、それから5度の焼失を経て、現在の建物は1415年に再建されました

※東金堂は五重塔修理の素屋根設置工事に伴って現在は閉堂中

興福寺伽藍の中心「中金堂」。2018年に再建落慶を迎えて復元された。image by:シカマアキ

興福寺伽藍の中心である「中金堂」は、創建より7回もの焼失と再建を繰り返し、8度目となる中金堂は2018年10月に落慶を終え、まさに約300年ぶりに天平の姿によみがえりました。


五重塔が約120年ぶりの大規模修理でしばらく見られなくなる

興福寺中金堂は1300年の創建時と同じ規模で再建され、当時の栄華がよみがえる image by:シカマアキ

なお、五重塔は現在、約120年ぶりとなる大規模修理工事が行われています。修理完了は2031年3月以降の予定。

塔全体をおおう素屋根の設置工事が2024年秋ごろ完了し、それからしばらくの間は、五重塔が拝見できなります。ぜひともこの機会に、参拝しておきたいものです。

世界遺産の登録25周年を記念し、700年以上親しまれてきたとされる「南都八景」に加え、「新・南都八景」が制定されました。興福寺では「若草山からの興福寺遠望」が選ばれています。

  • 興福寺
  • 奈良県奈良市登大路町48
  • 0742-22-7755(本坊事務所 9:00~17:00まで受付)
  • 近鉄奈良駅/JR奈良駅
  • 【国宝館】大学生以上700円/中高校生600円/小学生300円【東金堂】大学生以上300円/中高校生200円/小学生100円【中金堂】大学生以上500円/中高校生300円/小学生100円
  • 定休日:なし
  • 9:00~17:00(入堂は16:45まで)
  • ホームページ
  • image by:Shutterstock.com
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
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ジャーナリスト・フォトグラファー。飛行機・空港、旅行、ホテル、グルメなどをメインに、国内外で取材、撮影などを行う。雑誌やWEB向けの記事、写真や旅行などのセミナー講師も務める。元全国紙記者。大阪在住。

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