長野県を愛する男のソウルフード。松本の甘くてまるい「ほうとう」の食べ方

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2015/08/19

平べったくて太い麺が特徴の郷土料理「ほうとう」は冬に食べるイメージが大きいですが、長野県では意外にも七夕時期に食べられるのだそう。

安曇野を中心に、長野県内の情報を発信するメルマガ「安曇野通信」に、信州・長野県での伝統的なほうとうの食べ方が紹介されていました。2015年の月遅れの七夕は8月20日ですから、長野の地域の習慣に習って夏のほうとうを食べてみては?

松本地方のほうとうは甘かった

甲州・山梨県とわが信州・長野県には、”ほうとう”と呼ぶ食べものがある。そしてまた、「うまいもんだよ、かぼちゃのほうとう!」と良く使われるいいまわしも。なお、「”ほうとう”と呼ぶ食べものがある」と書いたが、「ほうとう」といういい方が残っているといった方がよいかもしれない。

広辞苑によれば、ほうとうとは、はくたくの音便形でうどん粉製の食べものと出ている。ほうとう・はくたくは、うどんの歴史の中では必ず出てくるもののようだ。

甲州の郷土食のほうとう、ネットに出ていたある解説によれば、

ほうとうが通常のうどんと大きく異なるのは、打つときに塩を使わないということ。そして、麺は生のまま直接鍋に入れて煮込む。(この意味では名古屋のみそ煮込みうどんに似ている)。打つときに食塩を加えないとグルテンの形成がゆるやかになり、もちもちした食感になる。さらに、煮込むことで麺のでんぷんが溶け出して、汁にもとろみがついてくる。

とあった。

山梨県や県内の佐久地方などでは、ほうとうとはかように手打ちの煮込みうどんというべきものだが、中信の松本地方のものは、幅広のうどんの麺をやや堅くゆで上げ、きな粉和え、ゴマ和え、あんこ和えしたもので、いわばパスタ風なものである。

このほうとうを、中信特に松本・筑摩地方では七夕(月遅れだから8月7日~)にお供えし、食べる習慣がある。昔はどこの農家でも小麦を作り、新しい小麦粉が出来る頃、ちょうど七夕になるため、その特別料理としてほうとうを作って供えたものといわれる。きな粉、ゴマ、あんこ和えはぼたもちと同じだが、ゆでたうどんに実によく合っていて、食べた味わいもいい。

私は、このほうとうが大好きで母が作ったものをよく食べたものだ。だが松本を離れて長く、郷愁の中の食べものになっていた。今は松本あたりの家庭でも、作って食べる家は少ないのではないか。


松本のほうとうは太いきしめんとは限らない

ほうとうは、手打ちうどんを煮込んだものをまとめての呼び名のようで、四季おりおりのほうとうが作られる。小豆ほうとう、かぼちゃほうとう、きのこほうとうなど、特徴のある材料の名が上につくと行事食になる。

山梨県や長野県の佐久地方には、国道脇などよくほうとうの店が見られる。チェーン店で東京あたりにも進出もしているようだ。佐久のほうとうは、信玄の東信濃支配など、交流の深かった甲州から伝幡したものだろう。

松本風のほうとうの食べ方は、うどんやきしめんのルーツという。すなわち、こんとんやはくたくの食べ方のバリエーションのひとつようだ。山梨のほうとうと同じものは平安や室町の昔からあったようである。

かぼちゃのほうとうは味噌味だが、小豆のほうとうは味噌味・塩味とはいかないので、調味料は砂糖。従って汁粉状になり、ここにかぼちゃが入ったりする。ほうとうでなく、だんごになる場合もある。

昔、県内の多くの家がそうだったと思うが、松本平の我が家でも、冬至にこの小豆・かぼちゃほうとうを食べる習わしだった。そのために母が一番おいしそうな唐カボチャを選んで、残しておいたものである。先述したように、普段はたいがい「ほうとう」ではなく、作るのに楽な「つみれだんご」だったが…。

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発刊以来10年、みすずかる信濃はアルプスの麓、安曇野を中心に信濃の光と風、懐かしき食べものたち、 野の花、石仏、植物誌、白鳥、温泉、そしてもろもろ考現学などを、ユニークな(?)筆致でお届け。

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