木造建築が密集する京都では、どんな火災対策をとっているのか?
「一般地域の木密地区の防災活動はどうしたらいいのか?」防災マニアが金先生に質問
先斗町の取り組みについて、もう少し詳しく聞いてみたいと思い、金先生に直接質問をさせていただきました。
Q:先斗町は特集な場所ですが、一般地域の木密地区の防災活動はどうしたらいいのでしょうか。
A:お店の中や家の中にすぐに手に入るような場所に消化器を備えること。消化器がある店舗が増えることによって、初期消火の確率が高くなります。
そのためには小規模の店舗でも必ず消化器を置くこと。初期消火の条件としては2分以内に15本の消化器を出火地点に集結させる必要があります。
大切なのは地域で初期消化ができる環境づくりが大切。そのためには多くの人に広報活動をし、自発的に消化器を備えていただくことが大事ですね。
Q:一般的な住宅で、消防車が入らない場合はどうすればいいのでしょうか。
A:基本的には2分以内に消化器を15本用意する必要があります。出火を発見し1分以内に消化器を取りに行き、そこから1分で火元へ向かうことができる場所に消化器を設置します。具体的には36メートル円の中に消化器を15本備えるべき。これは日本の消火栓の配置の仕方と同じです。消化器の寿命は10年、地域によっては寿命前の消化器を訓練に使用し無駄なく消費しているケースも。消化器で素早く消火出来るようになるには訓練が必要です。消化器が噴射されつ範囲は実は狭いんです、だいたい3メートルほどですね。
Q:もし、実際に先斗町で火災に遭遇したらどうしたらいいのでしょうか。
A:まずは、お店の従業員がまずは消化できる規模の出火なのかを判断しましょう。例えば、台所の火災の火が天井まで登ったとしても、消化器が15本以上あれば鎮火できる確率はゼロではありません。しかし、逆に天井まで登った火を消化するには一般市民がケガをする可能性も出てきます。それらを防ぐためにも手早く、周りの店舗に知らせて迅速な避難指示が出せるような体制づくりをするべき。まとめると、従業員の指示に従って慌てず避難することがベストです。
Q:京都では避難経路の標識や看板が美観を損なうとして、少ないと聞きましたが
A:そうでもなくて、東山地区、清水寺あたりは外国語も併記されて設置されていますが、一方で小さい通りや、商店街では看板条例などで撤去されるケースもあります。先斗町に関して言うなれば、看板などはほとんどありません。観光客が避難できない可能性もあるので、そういったところは今後、道路の舗装のデザインによって避難路が自然にわかるようなことも行っているが、どこまできるかまだわかりません。
以上、先斗町の取り組みについて紹介しました。
今回、取材させていただいた金先生は2008年2月に南大門で発生した火事を目の当たりにし、歴史のある文化遺産が跡形もなく消失したことに、大変心を痛めたのをきっかけに防災を研究しようと決心したといいます。
火事だけに限らず自然災害は私たちの日常生活を一瞬で奪う力を持っています。しかし、人間は長い歴史の中で様々な知恵と工夫を蓄え、現在まで発展してきました。時代が変化し、いかなる生活環境の中でも先人が蓄えた知恵と工夫は必ず活かされることでしょう。また私たちも、未来への人々に少しでも多く経験値を残せていけたら、今を生きる励みになるのではないでしょうか。
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つぼっち/防災のプロを目指すサバイバルマニア。MAG2 NEWでもサバイバル関連の記事を発表。近い将来、防災アドバイザーとして、防災教室を開いたり災害対策の講演を全国で行う予定。