まるでドムが覗いているような、千葉の軍事遺跡「掩体壕」の正体
先ほどの滑走路と同じ時期に造られた『掩体壕(えんたいごう)』が、約70年の時を超えた今もなお、私たちの前に少し威圧感さえある姿を見せているのです。
匝瑳市に残る掩体壕は、香取航空基地所属の航空機を収容して敵の空襲の被害から守るための施設で、基地周辺に合計25基が造られました。この地に残されている掩体壕は、エンジンが一つの単発機用だと思われます。
掩体壕は全国各地にまとまった数が残存していますが、この匝瑳市の掩体壕には珍しい特徴があります。掩体壕はふつう、円弧の部分しか地上に露出していません。
しかし、この掩体壕は円弧の下にある通常は埋まっている直線部と、さらにその下の台形になっている土台が見えています。戦後、この土地を農地に再転用した際に周辺の土が削られたと推測されます。
そのおかげで地面から頂部までの高さが増して少し大きく見えます。匝瑳市設置の現地解説版には、間口19.5メートル、奥行き10.6メートル、高さ6メートルとあります。基礎部分が見えている事は、戦争遺跡研究を進めるうえで、この掩体壕をより意義深い存在にしているのではないでしょうか。
掩体壕は単純なアーチではなく、航空機の形状に合わせて前部の主翼収容部を広く、後部の尾翼収容部をすぼめてあり、それぞれ別の工法で構築されたものが組み合わさっていいます。また開口部(搬入口)は、航空機の操縦席を覆うキャノピーと呼ばれる部分の形状に対応し、一部を山型の切欠きにしており、全体的にかなり凝った構造です。
機体によりフィットした形にすることにより、機体収容時の内部空間を減じ、爆風などからの抗堪性を高めていると思われます。