福井にある「時間のものさし」へ。7万年の歴史が眠る「水月湖の年鎬」
年代の測定に炭素14が大切な理由
しかし、放射性炭素年代測定にも、一定の限界があります。炭素14が5730年かけて半分になっていると分かっていても、その生き物に生前、炭素14がどれくらい含まれていたのか、生物が死んで炭素14が減り始める「スタート」地点が正確に分からなければ、年代をきちんとさかのぼれないからです。
そもそも炭素14は、宇宙から(太陽や遠い銀河から)飛んでくる宇宙線のひとつ、中性子(NeutronのNと書くのでした)が窒素14とぶつかって生まれます。
「窒素14」という言葉にアレルギーがある方は、上のイラストを見てください。
原子の真ん中(核)に含まれた陽子(P)が7個、中性子(N)が7個となっています。窒素の場合、陽子(P)は7個です。これは変わりません。中性子(N)も7個の場合がほとんどです。7+7で14。
上空に浮かんでいるその窒素(窒素14)に向かって、宇宙線(中性子)が飛び込んできます。中性子が窒素とぶつかると、ビリヤードのように玉突きが起きて、窒素の陽子(P)が1個弾き飛ばされてしまいます。陽子(P)の数が変わると、原子の種類も変わります。
窒素(陽子が7個)の陽子が1個弾き飛ばされてしまうと、炭素(陽子が6個)に変化します。
さらに、玉突き事故を起こした当事者の中性子は、そのまま原子の中心(核)に居座るので、もともと窒素にあった7個の中性子が、全部で8個になります。
思い出してください(あるいは、前のページを振り返ってください)。陽子(P)が6個の炭素に、中性子(N)が8個といえば、6+8で炭素14と同じです。要するに、宇宙線とぶつかった窒素は、上空で炭素14に変わってしまうのですね。
ただ、炭素14は中性子(N)の数の方が多いため、不安定だといいました。すぐに酸素(O)と結びついて、二酸化炭素(CO2)になります。
植物は光合成を通じて、その炭素14由来の二酸化炭素を吸い込みます。炭素14由来の二酸化炭素を吸い込んだ植物を、今度は動物が食べます。こうして動物にも、炭素14が取り込まれます。