福井にある「時間のものさし」へ。7万年の歴史が眠る「水月湖の年鎬」
「動植物が生きていた時期」を特定する際に利用される土の層
このしま模様の土の層を、「年縞(ねんこう)」と呼びます。7万年分の土の層がこれほど奇麗に連続して残っている場所は、世界で見ても水月湖の湖底にしか見られないそう。この土のしま模様の層が、時代の特定で極めて重要になるのだとか。
例えば、どこかの遺跡から不思議な植物の化石が見つかったとします。その植物が一体、何年くらい前に生きていたのか、どのように調べると思いますか?世界の学者が利用する方法のひとつが、放射性炭素年代測定です。
「放射性」とか、「炭素」とかいう言葉が出てくると、筆者も含めた「文系人間」は、途端に「無理」と脳が拒否反応を示すかもしれません。しかし、そんなに複雑な話ではありませんので大丈夫。
放射性炭素年代測定では、動物や生き物に含まれる「炭素14」という原子に注目します。「おい、何だよ炭素14って」と思うかた。初耳かもしれませんが、炭素といっても実はいくつか種類があるとご存じでしょうか。
一般的に文系の人が記憶する(イメージする)炭素は、炭素に12という数字がついた炭素12。先ほどの14と12の違いは、炭素原子の真ん中(核)に含まれた陽子(上のイラストでProtonのP)と中性子(NeutronのN)を足した数の違いです。
ちょっと意識が遠のきかけたかたは、上のイラストをあらためてチェックしてください。
それぞれ陽子(P)と中性子(N)が6個ずつ、合計で12個ありますよね。炭素の真ん中にある核に、どれだけの「粒」が含まれているか、この数で14とか12だとかが決まります。
炭素の陽子(P)は常に6個。これは変わりません。中性子の数も普通は6個ですが、7個、8個の場合もあります。炭素14の場合は、陽子(P)が6個、中性子(N)が8個。
しかし、陽子(P)より中性子(N)が多い原子は「普通ではない」ため、不安定な状態になります。炭素14も同じで、もっと安定した原子になろうと、どんどん消えて(別の原子に変わって)いきます。
放射性炭素年代測定では、この炭素14の量に注目します。動植物が死ぬと、動物の体や植物の中に含まれている炭素14が少しずつ減り(放射し)、5730年かけて半分になるというルールがあります。
見方を変えれば、「化石に炭素14がどのくらい残っているのか」で、その生物が生きた時代を突き止められるともいえます。
時とともに減っていく(放射する)炭素の残量を見て、動植物が生きていた年代を測定する方法を、放射性炭素年代測定と呼ぶのですね。