福井にある「時間のものさし」へ。7万年の歴史が眠る「水月湖の年鎬」

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2020/05/26

「動植物が生きていた時期」を特定する際に利用される土の層

実物の年縞(湖底をボーリングして取り出した地層を横向きに倒した状態)。明るい層が春から秋にかけて積もるプランクトンの死がいなど有機物、暗い層は黄砂や鉄分などの鉱物質が積み重なってできる。暗い層と明るい層を合わせて1年と見る。1年の層の厚みは平均して0.7mm。太い帯状の明るい部分は、地震で大量の土砂が湖に流れ込んできたと考えられる。image by:福井県観光連盟

このしま模様の土の層を、「年縞(ねんこう)」と呼びます。7万年分の土の層がこれほど奇麗に連続して残っている場所は、世界で見ても水月湖の湖底にしか見られないそう。この土のしま模様の層が、時代の特定で極めて重要になるのだとか。

例えば、どこかの遺跡から不思議な植物の化石が見つかったとします。その植物が一体、何年くらい前に生きていたのか、どのように調べると思いますか?世界の学者が利用する方法のひとつが、放射性炭素年代測定です。

「放射性」とか、「炭素」とかいう言葉が出てくると、筆者も含めた「文系人間」は、途端に「無理」と脳が拒否反応を示すかもしれません。しかし、そんなに複雑な話ではありませんので大丈夫。

炭素(炭素12)のイラストimage by:Shutterstock.com

放射性炭素年代測定では、動物や生き物に含まれる「炭素14」という原子に注目します。「おい、何だよ炭素14って」と思うかた。初耳かもしれませんが、炭素といっても実はいくつか種類があるとご存じでしょうか。

一般的に文系の人が記憶する(イメージする)炭素は、炭素に12という数字がついた炭素12。先ほどの14と12の違いは、炭素原子の真ん中(核)に含まれた陽子(上のイラストでProtonのP)と中性子(NeutronのN)を足した数の違いです。

ちょっと意識が遠のきかけたかたは、上のイラストをあらためてチェックしてください。

それぞれ陽子(P)と中性子(N)が6個ずつ、合計で12個ありますよね。炭素の真ん中にある核に、どれだけの「粒」が含まれているか、この数で14とか12だとかが決まります。

炭素の陽子(P)は常に6個。これは変わりません。中性子の数も普通は6個ですが、7個、8個の場合もあります。炭素14の場合は、陽子(P)が6個、中性子(N)が8個。

しかし、陽子(P)より中性子(N)が多い原子は「普通ではない」ため、不安定な状態になります。炭素14も同じで、もっと安定した原子になろうと、どんどん消えて(別の原子に変わって)いきます。


放射性炭素年代測定では、この炭素14の量に注目します。動植物が死ぬと、動物の体や植物の中に含まれている炭素14が少しずつ減り(放射し)、5730年かけて半分になるというルールがあります。

見方を変えれば、「化石に炭素14がどのくらい残っているのか」で、その生物が生きた時代を突き止められるともいえます。

時とともに減っていく(放射する)炭素の残量を見て、動植物が生きていた年代測定する方法を、放射性炭素年代測定と呼ぶのですね。

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