福井にある「時間のものさし」へ。7万年の歴史が眠る「水月湖の年鎬」

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2020/05/26

7万年前まで1年ごとに炭素14の量を調べられる水月湖の年縞

太陽風の影響で太陽の反対側に広がる地球磁場の様子image by:Shutterstock.com

ただ、植物や動物の中に取り込まれる炭素14の量は、いつも一緒ではありません。炭素14をつくる宇宙線の量が、一定ではないからです。大気中に存在する炭素14の量が変われば、植物が光合成で取り込む炭素14(由来の二酸化炭素)の量も変わってきます。

その光合成も、植物が死ねばストップします。言い換えれば、死んだ年によって、死体に残る炭素14の量は変わります。

だからこそ、化石の年代を特定する際に、「○○年は××だけの炭素14が大気中に存在した」と、年代別にさかのぼって確認できる「データブック」が必要になるのですね。

いままで使われてきた「データブック」は、年輪で正確に年代を特定できる古い樹木などでした。年輪のそれぞれの層に含まれる炭素14を調べて、「○○年には××だけの炭素14が存在した」と基準表をつくっていたのですね。

しかし、屋久杉でも樹齢3000年です。樹木で調べるといっても、さかのぼれる時間には限度があります。

その点、水月湖の湖底で掘り出された年縞には、7万年分の地層が奇麗に残っていました。各層には、その年の大気にどれだけ炭素14が含まれていたのか、確かな記録が残っています。

言い換えれば、過去7万年前まで1年ごとの炭素14の量を正確にチェックできる「データブック」が、水月湖の底に眠っていたのですね。

国際的な取り決めによって、年ごとの炭素14の量をまとめた基準表が存在します。その最新版IntCal13には、世界のいくつかの年縞に加えて、水月湖の年縞も採用されています。しかも、

<その突き抜けた品質が評価され、IntCal13では全面的に採用されました>(福井県年縞博物館『奇跡の湖 水月湖 年縞』より引用)

との話。特定の場所で採取された年縞のデータに依存しないようにと、IntCal13ではさまざまな場所の年縞が採用されています。水月湖の年縞は、そのなかでも圧倒的に大きな影響力を持っているみたいですね。


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