北陸に唯一残っている、昔懐かしいレトロな「ハンバーガー自販機」
自動販売機で売られている食べ物といえば何を思い浮かべますか?飲み物は当たり前ですが、食べ物となると一般的にはアイスクリーム・おかしなどでしょうか。
筆者は、子どものころ通っていたスイミングスクールの待合室にあった「ハンバーガー自販機」を思い出します。レッスン後に着替え終わって、心地良く疲れた、体の芯に冷たさを感じるなかで、たまにハンバーガーを買ってもらいました。
ジュースなどと違って少し値段が高いので特別な理由がないと買ってもらえなかったのですが、逆にその特別感もあって口にした瞬間は幸せだったことを覚えています。
いまでこそグルメバーガーが世の中にたくさんあって、味わいと見た目の豪華さを競っていますが、子どものころにスイミングスクールの後で食べた自動販売機のハンバーガーの味も忘れられません。
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最近、見かけなくなった「ハンバーガーの自動販売機」
とはいえ今ではその自動販売機も見かけなくなりました。どうして、ハンバーガーの自動販売機は姿を消したのでしょうか。
日本自動販売システム機械工業会の「自販機普及台数」を見ると、その背景がちょっとだけ分かる気がします。食べ物を扱う自動販売機そのものが少なくなっているのです。
同会の資料によれば、自動販売機も分類ができて、
- 飲料自動販売機
- 食品自動販売機
- たばこ自動販売機
- 券類自動販売機
- 日用品雑貨自動販売機
といったジャンル分けができるみたいです。このなかでハンバーガーを売っている自動販売機は食品自動販売機になります。2020年12月末時点で全国の食品自動販売機自体は約7万台(自動販売機全体の1.7%)です。
飲料を売る自動販売機の数が最も多く約202万台(56.4%)で、たばこ自動販売機ですら約12万3,000台(3.0%)ありますから、食品自動販売機は最初から数が少ないのですね。
その上、2020年における食品自動販売機の数は前年度比で97.4%と減っています。そもそも過去10年で自動販売機全体が大きく数を減らしていて、2010年と比較すると全体で120万台の自動販売機が減少。数をならすと1年で12万台減っているわけです。
その背景には当然、コンビニエンスストアとインスタント食品の普及があります。
もともと食品自動販売機は少ない上に、自動販売機自体が全体で減っているので、ハンバーガーの自動販売機を見かけなくなって当然なのですね。
レトロ自販機がクラファンで復活!
しかしその懐かしいレトロ自販機のともしびを守る人が富山県にいます。富山県に暮らす会社員の嵯峨拓也さんです。
2018年に嵯峨さんが実施したクラウドファンディングの文面によると、富山県内にあったドライブインが廃業し、その場にあったハンバーガー自販機がスクラップ処分される運命になったのだとか。
魚谷祐介著『日本懐かし自販機大全』(辰巳出版)によると、ハンバーガーを売る自動販売機は1971年から1994年に製造されています。この年号は筆者が子どものころ水泳教室に通っていた時期と確かに重なります。
しかしその自動販売機も時代とともに消えて、今では全国に数えるほど、北陸には上述のドライブインに1台が残さるばかりとなりました。その1台もドライブインの廃業とともにスクラップが決まります。
その「ハンバーガー自販機」をドライブインのオーナーに問い合わせて譲り受け、クラウドファンディングで修繕費を集めた人が嵯峨さんです。
富山県東部の黒部市にあるフリースペース「自由空間かって屋」の一角に設置してもらい、嵯峨さん自身が自動販売機の管理を担当しながら月に1度のペースで販売をスタートしたのですね。
地元のフリーペーパーによれば販売初日は行列ができたそう。筆者がたまたま近くを通り掛かってお店の前に出ていた立て看板を発見した日も、次から次へとお客がハンバーガーを買っていきました。