実は世界三大織物。奄美大島の伝統工芸品「大島紬」の魅力とは
世界に誇る精緻な織り
世界でも類を見ないほど、複雑で細かな絣(かすり)模様は、大島紬の魅力のひとつです。泥染めをして黒く染まった絣むしろを解くと、木綿糸で防染した箇所が白く残り、この部分が絣模様を生み出します。
基本的には、締機(しめばた)による絣作りで大島紬は製造されてきました。大島紬は「2度織る」と表現されるように、締機で緯糸に絹糸を用い、経の木綿糸で締めて絣糸にします。
そして木綿糸は、色を染めた後で解かれます。締機でできた絣糸は筵(むしろ)状なので、絣筵(かすりむしろ)と名付けられてきました。
紬を染めてから手織りするのも大島紬のポイントです。たて糸とよこ糸を交互に織っていく平織りという技法が使われており、織り上がった反物は、表から見ても裏から見ても同じ模様が浮き上がります。
ベテランと呼ばれる織り手でも1カ月から半年以上かかるものまであるほど、とても大変で根気のいる作業なのです。
大島紬の用途
大島紬は、特別感のあるフォーマル着として愛用されてきました。ただし、大島紬は決して最高級の正装としてだけ用いられているわけではありません。大枠では「普段着」に値する格であり、決して堅苦しい場でしか着られない着物ではないのです。
大島紬の薄くて丈夫な地風は着心地が良く、しわになりにくいのが特徴なので、日常的に着ても大きな問題にはならないと言われています。
大島紬に合ったシーンはお稽古や趣味の場、観劇や外食など。そのほか、同窓会や結婚式の二次会などの正装を求められる場所以外では着ていけます。高級感があるにもかかわらず、気軽に着られるのは大島紬の魅力のひとつです。
ちなみに、時代とともに大島紬の中でも正装向けの模様が発案されてきています。大島紬の訪問着や振袖、礼装なども販売されていて、シーンに合った品を選べるようになっているのです。
現在の大島紬
奈良時代に建てられた東大寺正倉院の献物帳に「南島から褐色紬が献上された」と記されています。ここでいう紬は、大島紬のシャリンバイ(テーチ木染)や泥染のルーツだとされてきました。
大島紬が商品として製造されるようになったのは明治時代の初期からで、明治中期になると注目度が上がり、大島紬の需要は増えていきました。その後、現代にも通じる光沢感のある大島紬が確立した昭和になると、泥藍大島や色大島、草木染大島など種類が豊富になります。
2020年代以降は「テキスタイル」と呼ばれる製品も見られるようになり、着物生地としての生産のみならず、大島紬の泥染の技法や織り技法を活用した洋服生地やネクタイ、ブックカバー、カバンなどの小物などが作られています。
奄美大島には大島紬の泥染の体験や工程を紹介した博物館などがいくつかあるので、ぜひ本場の大島紬を体感しに訪れてみてください。
- 大島紬村
- 鹿児島県大島郡龍郷町赤尾木1945
- 0997-63-3100
- 定休日:年末年始(12/31〜1/1)
- 9:00〜17:00
- 公式サイト
- 大島紬美術館・大島紬資料館
- 鹿児島県奄美市笠利町大字平1260 ホテル ティダムーン内
- 0997-63-0065
- 公式サイト
- ※ホテルフロントにて要事前見学申込
- image by:(C) K.P.V.B
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