都市伝説まで生まれた、巨大すぎる「大船観音」の激動の歴史と魅力
鎌倉の巨大仏像といえば、「鎌倉大仏殿高徳院」の鎌倉大仏を思い浮かべる人が多いでしょう。
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で源氏や北条氏ゆかりのスポットに注目が集まった鎌倉ですが、鎌倉大仏が市内南部にあれば、北部には「大船観音」という巨大観音像があるのをご存じでしょうか。
山の上から観音様が顔をのぞかせ街を見下ろしているその姿から「下半身が地中に埋まっている」といった都市伝説も。一体どんな観音像なのでしょうか?さっそく、その実像に迫ってみましょう。
目次
※本記事は新型コロナウイルス感染拡大時のお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウイルスの国内・各都道府県情報および各施設の公式情報を必ずご確認ください。
大船駅から徒歩約5分!車窓からも見える観音像
東京から鎌倉方面へJR横須賀線で下ってくると、JR大船駅のあたりで山の中腹に大きな白亜の頭部が垣間見えます。それこそが通称「大船観音」と呼ばれる、「白衣観音像(びゃくえかんのんぞう)」です。
大船は鎌倉の玄関口。地元住民にとっては、見慣れた観音様のお顔が車窓から見えると「ああ、鎌倉に帰って来たな」と実感し、ついつい手を合わせてしまうのであります。
大船観音を祀る「大船観音寺」へは、大船駅西口から徒歩約5分ほど。駅舎の階段から降り立てばすぐに、切り立った高台の上に見えてきます。
交差点の手前まで来ると、お顔が見えます。さらに離れればお顔全体を拝むことができます。
いざ大船観音寺へ!駅前の喧騒を抜け、参道へ
線路周辺の開けた大通りから一本、道を曲がればすぐに大船観音寺の入り口が見えます。山門までは細くて急な山道になっており、鎌倉ならではの地形を感じられます。
山道を登るのは少しきついと感じるかもしれませんが、それもごく短距離。やがて山門に至ります。
山門は無人のため、参拝料を箱に投じて山門をくぐります。駅前のにぎわいとうってかわって、しんと静かな境内。
観音像の真下に来ているため、ここからは観音様の姿が見えません。その姿は、山門から境内を右に進んで階段へ来ると、いよいよ目にすることができます。
観音様の御前に。そのお顔つきは自分の心を映す鏡?
観音像にお参りするには、さらに階段を上がる必要があります。一段一段、進むにつれてお顔が近くなります。頂上に至るまでちょっとしたドキドキ感を味わいます。
同寺によると、観音像の大きさは高さ約25m、幅約19m。全国的には100m級の巨大観音像もあることから、大船観音が格別に巨大だとは言えないようですが、近くで見るとかなりのインパクトです。
大船観音は立像ではなく胸から上だけで約25mあるため、お顔をより近くで見られるせいかもしれません。
何よりも惹きつけられるのは、優美な曲線を描く眉や鼻筋、切れ長の目にふっくらとした唇、頬……「慈愛に満ちた表情」とはまさにこのようなお顔を指すのではないでしょうか。
黒目が描かれていないのにもかかわらず、やさしいまなざしを感じてしまいます。
周りから聞こえてくるのは、鳥のさえずりと線路を走るガタンゴトンという電車の音だけ。ただ観音像の前にたたずむだけで、心が静まっていくのが分かります。
今回、同寺の僧侶である諸橋(もろはし)さんにお話をうかがいました。
諸橋さんは毎朝5時に観音様にお参りするそうですが、日によって受ける観音様の表情の印象が異なるとか。
「反省事がある時には、観音様があまり笑っていないように見えたりします。観音様の表情は、自分の心を映す鏡なのかもしれません」と話してくれました。
なぜこんなにも巨大な観音像が作られたのか?都市伝説のウワサは本当?