坂道を勝手に車が上りだす…日本にも韓国にもある「ゆうれい坂」とは一体なに?

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2025/02/01

人間の視覚は意外にも結構、頼りないですよね。自分が動いていないのに周りの景色の変化で自分が動いていると錯覚した瞬間は誰にでもあると思います。似たような錯覚は、道路を車で走っているときにも生じます。

例えば、全国にある「ゆうれい坂」では、ニュートラルの状態で停車した車が「上り坂」に向かって勝手に上っていくなどの不思議な現象が報告されています。そこで今回は、日本を含め、世界各地にある「ゆうれい坂」について紹介します。

不思議な現象が起きる坂道「ゆうれい坂」

写真提供:福岡県観光連盟

冒頭でも触れましたが「ゆうれい坂」をご存じですか。

「ゆうれい坂」と聞くと、心霊現象が目撃される坂道や、肝試しの舞台になるような坂を想像してしまいますが、ちょっと違います。東京都の文京区や千代田区、品川区などにある地名の幽霊坂ともまた違います。

国内でいえば、福岡県遠賀郡岡垣町にある「ゆうれい坂」の知名度が高いかもしれません。

福岡県や岡垣町などの自治体が「名所」としてPRしている上に、上に掲載したような写真をメディア向けにも自治体が用意しているからですね。岡垣町のイメージソングにも「ゆうれい坂」は登場します。

ちなみに、岡垣町といわれてピンとこない人、北九州市にも近い玄界灘に面したこの街は、大東建託が調査した「住み続けたいまちランキング」で福岡県内1位(九州・沖縄全体でも3位)に選ばれるといった側面もあります。移住先を探している人も含めてこの際、ちょっと注目した方がいいかもしれません。

この岡垣町にある「ゆうれい坂」とは、どういった坂道なのでしょう。心霊現象ではないものの怪奇現象のような不思議な現象が発生する坂道です。

何が不思議なのかといえば「下り坂」を目の前にして空き缶を置くと、重力に反して空き缶が自分の方に戻ってくる(坂道を登り始める)現象が見られるのです。


どうして、このような怪奇現象が起きるのでしょうか。そのからくりは、「縦断勾配錯視(じゅうだんこうばいさくし)」が発生する坂道だからです。

「おばけ坂」「ミステリー坂」など呼び方はさまざま

image by:photoAC

この縦断勾配錯視とは何でしょうか。小学館『大辞泉』を調べると、次のように書かれています。

<錯視の一つ。坂道などを正面から見たときに、見かけの傾斜と客観的な傾斜が異なり、下り坂が上り坂に見えたり、上り坂が下り坂に見えたりすること>(『大辞泉』より引用)

辞書には、「坂道錯視」という言葉も掲載されています。この錯覚(錯視)が生じる条件のそろった場所が「ゆうれい坂」といえるのですね。

岡垣町では、国道495号線から、成田山不動寺に向かう途中の参道でこの縦断勾配錯視が発生します。

緩やかな上り坂の先に急な上り坂が続いているため、参道沿いに生えている有名な桜並木の生え方も手伝って、緩やかな上り坂が逆に、下り坂に見えるのです。

同様のスポットは国内にいくつもあります。それぞれの土地で「幽霊坂」「おばけ坂」「ミステリー坂」などと呼ばれています。

例えば、香川県高松市の屋島に通る屋島自動車道(屋島スカイウェイ)の「ミステリー坂」は特に、強い錯覚を感じると評判です。高松市に暮らしている方であれば、そのうわさはきっとご存じですよね。

海外にもある!韓国の済州島の「ゆうれい坂」は観光地に

インドの「ゆうれい坂」image by:Rudra Narayan Mitra/Shutterstock.com

縦断勾配錯視が発生する「ゆうれい坂」は当然、海外にもあります。英語で「gravity hills」だとか「magic hills」だとか「magnetic hills」だとかいいます。いずれも「gravity-defying spots(重力に反するスポット)」といった意味です。

代表的な場所でいえば、カナダのニューブランズウィック州モンクトンにある「磁石の丘(Magnetic Hill)」、アメリカのフロリダ州、およびカリフォルニア州のサンタクルズにある坂道、スコットランドのエアーシャーにある「エレクトリックブレイ(Electric Brae)」、オーストラリアの南オーストラリア州にある「磁石の丘 (Magnetic Hill)」などなど。

ちなみに、スコットランドの「エレクトリックブレイ」の「ブレイ」とは聞き慣れない言葉ですが「川の堤防の斜面、丘の側面」といった意味の単語になります。いずれも、見た目の傾斜の角度と、実際の傾斜の角度がずれる場所です。

韓国の「神秘道路」image by:Dann19L/Shutterstock.com

もちろん、英語圏の国のみならずアジアにもあって、韓国の済州島にある「シンビエドロ(神秘道路)」も有名です。こちらは、通称で「トッケビ道路」と呼ばれています。トッケビとは韓国語で「お化け」の意味。

新婚旅行の夫婦を乗せたタクシー運転手が発見し、口コミでその後広まって、済州島の名所に現在ではなったみたいです。

皆さんの近所でも、下り坂・上り坂だと勝手に決め付けていた坂道が現実には異なっているケースもあるかもしれません。

その錯覚が強烈であれば、済州島のように観光客を呼び集める起爆剤になるかもしれません。ちょっと探してみてはいかがですか? 

また、国内や海外旅行に出掛ける途中に、有名な「ゆうれい坂」があれば立ち寄って体験してみてくださいね。

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翻訳家・ライター・編集者。成城大学文芸学部芸術学科卒。富山在住。主な訳書『クールジャパン一般常識』、新著(共著)『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』。北陸のWebメディア『HOKUROKU』創刊編集長。WebsiteTwitter 

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