これが無料で見学できるなんて。現役最古の官公庁舎「京都府庁旧本館」

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2023/08/26

旧知事室で見つけたヒミツ

2階の南東角は旧知事室です。この部屋を使った知事は第10代目の大森鍾一氏から第34~40代目の蜷川虎三氏までの24人。67年間にわたり使用されました。

今年3月に文化庁の建物が東隣に建つまで、この部屋から比叡山や大文字山(如意ヶ嶽)を眺めることができました。

ところで、旧知事室に備えられたこの飾り棚には「村井吉兵衛」と書かれた小さなプレートが付いていました。

どこかで聞いたことがある名前だなと思ったら、明治時代に紙巻タバコで財を成し、円山公園にある洋館「長楽館」を建てた人物。この村井氏が府庁建設のために今のお金で1億円も寄付したのだそうです。

この家具も寄付の一つで、東京築地にあった杉田屋のもの。杉田屋といえば明治期最大の高級家具製造業者で、宮家や富豪らの家具を調達したことでも有名。村井氏が寄贈した杉田屋の家具は、あと2つあるそうなので要チェックです。

そして、小松さんに教えていただいて驚いたのが暖炉の上ある小さな切り口。よ~く見ると穴の向こうにレンガが見えるんです。旧本館は全体的にレンガ造りなんですね。この穴からは、その構造部分を見ることができます。

また、部屋の隅にはスチームも。旧本館の各部屋にはスチームが配されているのだとか。アサヒグループ大山崎山荘美術館にも各部屋にスチームが付いて驚きましたが、旧本館にもあったとは!

こちらではイギリスから船で輸入した4つのボイラーを導入し、セントラルヒーティングになっていたそうです。京都の冬は寒いですからね。

そうそう、廊下の端の黒い部分はリノリウムなんですって。学校の廊下や病院、ダンススタジオの床などに敷いてあるアレです。


旧本館は元々、床張りだったようですが、1928(昭和3)年の昭和天皇の即位の礼の際、リノリウムが敷かれたそうです。こんな年代もののリノリウムを間近でみられるとは!そっと押してみたのですが、現在のものよりずっと硬い感じがしました。

豪華客船のような美しい旧議場へ

さて旧本館は中庭を囲むように口の字型に作られて、南側に正庁や旧知事室、北側に旧議場があり、ぐるりと一周歩くことができます。柱が並んだ回廊を歩いていると、まるでヨーロッパの修道院にいるような気分になります。

中庭にはたくさんの桜の木が植えられていて、春はピンク色に染まるのだとか。中央の「祇園しだれ桜」は、桜守として知られる16代佐野藤右衛門氏が、先代と共に円山公園の祇園しだれ桜の実生木(みしょうぼく。種から育った木)を植えたもの。

ちなみに庭は平安神宮などの庭を作った明治の作庭家・七代目小川治兵衞の手によるものです。

さて、ここから先が旧議場です。奥の方の壁には切り込みが入っているのですが、これはここからは“正庁と異なる場”ということを表わしているのだとか。

京都府庁旧本館の特徴のひとつに、庁舎と府議事堂が一体化していることがあります。建設当時、そのスタイルは非常に珍しく、全国から多くの自治体が見学に訪れたそうです。それを聞くとちょっと誇り高い気分になりますね。

こちらが旧議場。きらびやかで豪華客船のよう。2階の回廊は傍聴席。1階の議員席は5段になっていて、3段までは足元にスチームが入っていたそうです。

美しいシャンデリアは近年の修復で複製されたもの。全部、職人さんによる手仕事だそうですよ。

正面の議長席の後ろはアーチ型をした「アルコーブ(壁面の一部をくぼませた部分)」があり、ここに付けられているカーテンも近年の修復により復元したもの。コサージュの数まで忠実に再現されているそうです。

2階傍聴席に付けられたカーテンは当時と同じく京都市の川島織物さんで作成。川島織物さんに当時の資料が残っていて、それを元に復元されました。

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