サンタさんじゃないの?11月にオランダにやってくる「シンタさん」の謎
子どものころ、年末が近づくと「今年はサンタさん何くれるかな?」とドキドキわくわくした方も多いですよね。実はオランダには、サンタクロースよりも一足早く、12月6日にプレゼントをくれる「シンタクラース」がいるんです。
サンタクロースに似てるけど、シンタクラースって何…?正直私も、オランダに来るまでその存在をまったく知りませんでした。
でもその絶大な人気にびっくり!オランダでは「サンタさん」よりも有名な、「シンタさん」ついて紹介します。
「シンタクラース」のお祭りって?
「シンタクラース」とは、現在のトルコに実在したキリスト教の聖人、聖ニコラウスがモデル。聖ニコラウスは数多くの奇跡を起こしたと言い伝えられていて、子どもを守る聖人としても知られています。
オランダのシンタクラースは、長く真っ白なあごひげに赤いマントを身に着け、白馬にまたがり、キリスト教の聖人らしくミトラとよばれる司教の冠をかぶっています。服装や杖などもキリスト教の司祭といった雰囲気。
毎年11月にオランダにやってきて子どもたちとふれあい、12月6日の自分の命日に去っていきます。
その期間、子どもたちは毎晩シンタクラースの馬のためのニンジンと欲しいものリストを自分の靴に入れて玄関に置いておくのですが、翌朝ニンジンとリストがなくなる代わりにチョコレートや小さなプレゼントが。
そして1年間ちゃんと良い子にしていた子どもたちには、12月6日に大きな贈り物が届けられます。前日の12月5日の夜にプレゼントをもらう場合も多いです。
白いひげに赤い服、そして靴下ではないけど靴にプレゼント…となると、やはりサンタクロースに似ていますが、それもそのはず。シンタクラースこそ、サンタクロースの起源と言われているんですよ。
ニューヨークの中心地であるマンハッタン島に、17世紀最初に入植したのがオランダ人で、彼らが持ち込んだオランダの文化がアメリカの地に残り、サンタクロースへと発展していったそうです。
とはいえ、現在のサンタクロースの故郷は北欧とも言われているし…。歴史と文化の中で、いろいろな形で変化して世界中に伝わっているのですね。
特別番組まで!毎日報じられる「今日のシンタクラース」
さて、そんなシンタクラースですが、オランダでの人気はサンタクロースなんて目じゃありません。
毎年11月にスペインから蒸気船に乗ってオランダにやってくるのですが、到着1週間前から特別番組「シンタクラースジャーナル」が始まるのです。
毎日放送される10分間の番組で、シンタクラースの今日の出来事や、楽しみに待つ子どもたちの様子などが全国のお茶の間に届けられます。
まず最初の1週間はスペインを出発してオランダに向かうシンタクラースたちの様子が報じられるのですが、毎年何かしらかのハプニングが起きます。
ある年は、船が嵐にあって積み荷が落ちて、みんなのプレゼントが流されてしまいました。翌日には、プレゼントが流れ着いていないか実際に海辺に様子を見にいった子どもたちが多数いたほど。
そしてオランダに到着する日は、なんとその様子が生中継で放送されるのです!
この番組の中では、シンタクラースは司会者と電話でインタビューに答えたり、実際にスタジオにやってきたりと、”本当にいる”という演出がすごいなあと思います。
各地に出現。会いに行けるシンタクラース
“本当にいる”感は、テレビ番組だけではありません。
国中の至るところでシンタクラース到着パレードが開催され、12月6日までの期間中にシンタクラースが常駐する「シンタクラースハウス」も各地に設置されるのです。まさに”会いに行ける”シンタクラース!
「え、シンタクラースってひとりじゃないの?」と思われるかもしれませんが、そこはご安心を。子どもたちの間でも「シンタクラースは忙しいから、お助けシンタさんたちが何人もいる」という設定で通っているのです…!
オランダ人はよく「合理的なものの考え方をする」とも言われますが、これはさすが。小学校にもシンタクラースはやってきて、学校行事としてシンタクラースのお祭りが行われます。
また私の家の近くのショッピングモールにも毎年シンタクラースがやってくるのですが、子どもたちからの質問に答えたり一緒に歌ったり、そしてお肉屋さんやお花屋さんに入って店員さんとおしゃべりしたりと実在感がすごい!これは人気にもなるなあと思いました。