「七不思議の湯」と呼ばれる伝説も…奥山梨に眠る神秘的な温泉探訪

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2024/05/15

首都圏から至近距離にある山梨はなかなかの温泉県。というのも、地理的にフィリピン海プレート、太平洋プレート、北アメリカプレート、ユーラシアプレート(岩盤)の4つのプレートが地下でぶつかり合う特異な地盤環境にあり、温泉的視点から見ると実に多様な泉質が育くまれる場所となっているから。

特に「奥山梨」と呼ばれる南アルプスの山懐に湧き出る温泉の素晴らしさは筆舌に尽くし難く、はるばる全国から温泉ファンが足を運ぶ地なんです。今回は、意外と知られていない奥山梨についてお話ししましょう。

奥山梨の神秘の湯「奈良田温泉 白根館」

「早川町」南部にある赤沢宿には、今でも江戸時代の面影を残す街並みが残ります image by:photoAC

奥山梨と呼ばれるのは静岡県と県境を接する最西端の町「早川町」。2000m~3000m級の南アルプスの山々に抱かれたこの町は、96%を森林が占める深山幽谷の自然が今もそのまま残る場所で、平成の市町村合併以降、日本で一番人口が少ない町でもあります。

奥山梨の秘湯「奈良田温泉 白根館」。入口には「日本秘湯を守る会の」提灯が image by:小林繭

この奥山梨の秘湯として知られるのが「奈良田温泉」。こんな山懐にありながら温泉の歴史は古く、天平年間(729年~749年)に女帝孝謙天皇が立ち寄ったことに始まると伝わります。

温泉ファンが目指すのは、“七不思議の湯”と言われる「奈良田温泉 白根館」。七不思議のいわれは、その湯がさまざまな病に効くことと、透明、白濁、青、グリーンと刻々と色彩を変えることにあり、とにかく湯が素晴らしいのです!

木造りの露天風呂 image by:小林繭

惜しみなく湯船に注がれる100%源泉掛け流し含硫黄ナトリウム塩化物泉は、とろっとろの質感で、色彩と同じくそのときによって硫黄臭の強さも大きく異なります。

湯のやわらかさも単純にやわらかいといった類のものではなく、もっと繊細で奥深く、そっと肌をコーティングしてくれるような質感。ナトリウムを多く含むアルカリ性の硫黄泉は他でもよくありますが、ここ「奈良田温泉 白根館」のような質感にはいまだお目にかかったことがありません。

ドバドバと勢いよく湯船に注がれる源泉 image by:小林繭

数値的に見れば、もっとアルカリ性成分が高く、化粧水成分と言われるメタケイ酸値も高い温泉もいくつもありますが、「奈良田温泉 白根館」のとろみには叶わないのです。

ご主人曰く、湯の色や質感の変化の仕組みについては未だにわからない、自然の不思議、ということで、まさにこれこそが神秘の湯


温度の異なるふたつの浴槽が並ぶ「総ひのき風呂」の内湯。極楽! image by:小林繭

残念ながら、2020年3月をもって「奈良田温泉 白根館」では宿泊業務は終了し、現在は日帰り温泉のみの利用となっていますが、たとえ宿泊できずとも何度でも行きたくなる温泉です。

いまだ未体験という人は、とにかくしのごの言わずに一度その温泉に浸かりに行くべし。あの気持ちよさを知ったら、絶対にまたリピートしたくなりますし、これまで知らなかったことを激しく後悔するはず。

ちなみに、男女ともに総檜の内湯と石造りの露天があり、日替わりでの男女交代利用となっているので、連日で行けばすべての浴槽に浸かることができます。

  • 奈良田温泉 白根館
  • 山梨県南巨摩郡早川町奈良田344
  • 0556-48-2711
  • 入浴料(1回入浴):大人1,000円/小人800円(1才~小学生)
  • 定休日:不定休(HPまたは電話で確認)
  • 営業時間:平日10:30〜16:00(最終受付15:30)/土日祝日10:30~17:00(最終受付16:30)
  • ホームページ

ダム湖に眠る「奈良田集落」

奈良田集落が沈む奈良田湖 image by:photoAC

「奈良田温泉 白根館」まで足を伸ばしたなら、ぜひ周辺の散策も。山懐のアクセス困難な場所に位置しながら思いのほか歴史が古いこの地は、民俗学の宝庫と称されるほど独特な文化が残ります。

現在奈良田湖に面してわずかに集落と言えるものが見えますが、実は奈良田集落自体は昭和28(1953)年に西山ダムの完成に伴い奈良田湖の底に沈んでいるんです。

「奈良王神社」image by:小林繭

つまり「白根館」の目の前に広がる湖の底にかつての集落が静かに眠っているということ。「白根館」のすぐ裏には孝謙天皇の住居跡に建てたといわれる「奈良王神社」がひっそりと美しく佇むのですが、最初訪れたときにこの規模の集落にしてはなんと立派で歴史の古い神社なのだろうと思ったので、ダム湖に集落が沈んでいることを知り、なるほどと合点がいきました。

鬱蒼と生い茂る木々の中で真っ赤な鳥居が鮮やか image by:小林繭

この神社からの眺めは、ダム湖に沈む前の集落の景観がどれだけ美しいものであったのかを無言で物語ってくれています。

「早川町歴史民俗資料館」image by:早川町観光協会

隣接する「早川町歴史民俗資料館」では、陸の孤島といわれたこの地において古くから伝わる雑穀栽培型の焼畑農業や里山暮らしの歴史に関しての資料が展示されていて、かつてこの地で育まれていた人々の暮らしに思いを馳せずにはいられません。知れば知るほど、なんとも奥深い集落なのです。

  • 早川町歴史民俗資料館
  • 山梨県南巨摩郡早川町奈良田486
  • 0556-20-5556
  • 大人600円/小・中学生300円(南アルプス山岳写真館と共通)
  • 定休日: 水曜(祝日の場合は翌日木曜)/年末年始
  • 10:00~16:00
  • 早川町観光協会ホームページ
「古民家カフェ鍵屋ユネスコパークステーション」image by:小林繭

神社の脇には、築200年越えの古民家をリノベした「古民家カフェ鍵屋ユネスコパークステーション」があるので、ついでに立ち寄ってみて。昔話に出てきそうな美しい里山の風景の中で食事やコーヒーをいただくことができます。

  • 古民家カフェ鍵屋ユネスコパークステーション
  • 山梨県南巨摩郡早川町奈良田1064-43
  • 0556-20-5556
  • 定休日:水曜/年末年始(水曜が祝日の場合は営業/翌日休業)
  • ホームページ

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