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世界のホテル王「ヒルトン」はいかにして世界大恐慌を乗り越えたのか

ケニー・奥谷
ケニー・奥谷
2018/07/14

世界一美しいカフェ、パームコート

文豪、スコット・フィツジラルドの代表作「ザ・グレート・ギャッビー」が出版されたのは1925年のことでした。

舞台は1922年のニューヨーク。第一次世界大戦後に訪れた空前絶後の好景気時代に生きた青年の明と暗の物語。それはアメリカ文学の金字塔と賞され、モダン・ライブラリー出版社の調査では、数多あるアメリカ文学作品中、最高傑作第2位にランキングされています。

この小説が最初に映画化されたのは1974年。主役を演じたのはロバート・レッドフォードでした。映画では、実際にプラザホテル館内での撮影場面が多く、ロビー階にあるカフェ、パームコートでの話し合のシーンでは、今でもそこで使われているアンティークのランプが映っています。また、主人公のギャッビーが恋人の亭主であるトムと言い争いをしたシーンも、プラザホテルに実際に存在した部屋で行われました。

当時のトラベルライターが“世界一美しいカフェ”と表現したパームコート。その美しさを引き立てる大きな要素は天井にあるステンドグラスにあります。単なる板ガラス状の装飾ではなく、湾曲構造で屋根を形成しています。

実は、その昔、部屋から飛び降りたゲストが、このステンドグラスを壊して下まで墜落したことがありました。その痛ましい事件以来、2005年にプラザホテルが閉館するまで、ステンドグラスが天井に戻されることはありませんでした。

2005年から4年かけて行われた大改装では、プラザホテルの半分以上がコンドミニアム(分譲マンション)へと改築され、多くのファンとスタッフを悲しませました。しかし、1点だけ喜びを与えてくれたことがありました。それはパームコートをオープン当初の形に戻すという計画でした。

パームツリーに囲まれ、天井から優しい光を投げかけるステンドグラス。そこに欠かせないのはハープが奏でるメロディー。このレストランに腰かけ、アフタヌーンティーのひと時を過ごしていると、確かに、ここよりも優雅な空間を造りだしているカフェを思い浮かべることはできません。長いときの流れとともに、世の中もプラザホテルも変わりました。しかし、“世界一美しいカフェ”はいまだ健在です。

ケニー・奥谷

奥谷啓介、NY在住。慶応義塾大学卒業後、ウエスティンホテルズ入社。シンガポールのウエスティン、サイパンのハイアット、そして世界屈指の名門ホテル・NYのプラザホテルに勤務。2001年米国永住権を取得、現在はNYを拠点に執筆&講演&コンサルタント活動中。日米企業にクライアントを持ち、サービス・売り上げ・利益向上の指導からPR&マーケティングまでのマルチワークをこなす。
メルマガ:「ニューヨーカーたち」 by ケニー・奥谷

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