車で走れる絶景砂浜。全長8kmの「千里浜なぎさドライブウェイ」
イワシを運ぶトラックが走り、1955年ごろに観光バスも走って一躍有名に
全国でもここだけという、車で走れるビーチ。上述の『書府太郎 下巻』にも、千里浜なぎさドライブウェイは年間100万台の車が通る人気の観光スポットになっていると書かれています。夏場になると海水浴客も集まるため、それこそ「渋滞」が起きるほどですが、そもそもこの道はどうして自動車が走るようになったのでしょうか。
筆者が地元の人から聞いた話によれば、営業時間外の路線バスがたまたまこの海岸線を走ったところから、一般の交通利用が始まったのだとか。一方で北國新聞社の『書府太郎 下巻』には、
<豊漁のころイワシを運ぶトラックが走り、1955年(昭和30)ごろから観光バスも走り出して天然のなぎさドライブウエーとして一躍有名になった>(上述の書籍から引用)
とあります。いずれにせよ地元の人が海岸を走り始めるうちに、観光客にも知られるようになって、今の地位を確立したみたいですね。
砂丘が陸側の景色を隠し、ドライバーを日常空間から切り離してくれる
筆者ももちろん、千里浜なぎさドライブウェイを今までに10回ほど運転しています。車で乗り入れてみると、砂浜の凹凸で車体が左右に軽く揺られる瞬間もありますが、基本的には至ってスムーズな移動が楽しめます。
海側には日本海が広がり、陸側には海岸線に並行して、季節風や卓越風によってできた急斜面の海岸砂丘が発達しています。その高さは見上げるほどで、砂丘の頂が陸側の景色をいい具合に目隠しするため、運転中はドライバーを日常の空間から切り離してくれます。千里浜なぎさドライブウェイは海水浴場でもあるため、好きな場所に車を停めて、日本海に沈む夕日を眺めるといった楽しみ方も可能。
ただ、当たり前の話ですが車線が引かれていないため、前後に車が全く走っていない瞬間などは、対向車とすれ違う際に距離感に戸惑います。特に北から南を向いて走行する際、対向車を避けようと大きく砂丘側へ入ってしまうと、砂が水で締まっていないため、車がまれにハマる場合もまれにあります。
また、夏場は海水浴客たちの停めた車などが砂浜にいっぱいになります。さらに、上述の引用文では幅70mとありましたが、
<1年間に約1メートルずつ侵食され、海岸線が後退しています>(羽咋市のホームページより引用)
とあるように、砂浜が年々狭くなっているとの情報もあります。さまざまな事情が重なり、夏場は接触事故が怖くて気持ちいいドライブを楽しめる状態ではありませんので、やはり人が少ない秋から初冬のドライブが最高です。つまり、今がベストシーズンですね。
余談ですが、車関連の仕事に就く友人からは、「車の足回りがさびるから絶対に行かない」などの発言も…。自家用車でドライブした後は、できるだけ早めに、足回りを含めて洗車をした方がいいかもしれませんよ。また、波が高いなど安全に走行できない場合は通行規制が行われる場合もあるので、公式サイトを確認することをおすすめします。
- 千里浜なぎさドライブウェイ
- 石川県羽咋郡宝達志水町今浜
- 石川みち情報ネット
- 通行情報は上記サイトからご確認ください。
参考
- 『書府太郎 下巻』(北國新聞社)
- 千里浜(ちりはま)再生プロジェクト 羽咋市