家族として受け継ぐ味。横浜に上陸したハノイ名物エッグコーヒーの物語
ベトナム・ハノイにあるエッグコーヒー発祥の店「CAFE GIANG(カフェジャン)」。1946年の創業から70余年、門外不出だったレシピが、2018年4月に日本の横浜中華街に上陸しました。
なぜ長きにわたり暖簾分けすらされることがなかったエッグコーヒーが、日本で味わえるようになったのでしょうか。今回はその物語と、同店の魅力に迫ります。
ハノイ名物、地元住民に愛される「エッグコーヒー」とは
73年前の1946年、ベトナム・ハノイにある5ツ星ホテル「ソフィテル・レジェンド・メトロポール」のバーテンダーだったグエン・ジャン氏。
当時は手に入りにくかった牛乳の代わりに鶏卵の黄身を泡立てたものを使用することを氏が思いつき、いま人気のエッグコーヒーが誕生しました。現在は氏の息子、グエン・トリホアンさんに受け継がれ、その味は守られています。
気になるこのエッグコーヒーとは、しっかりとした苦味がありながら飲みやすいベトナムコーヒーに、黄卵とコンデンスミルクでカスタードクリーム状に泡立てたものを乗せたもの。
これをよく混ぜてからいただくのですが、クリームは濃厚でなめらか。ベトナムコーヒー特有の苦味と、ミルクや卵の甘みのバランスが絶妙で、その味わいはカスタードクリームやティラミスを飲んでいるような感覚です。現地では、カフェ・チュンと呼ばれ、親しまれています。
ハノイの旧市街地にあるカフェのなかでも古くから愛されているカフェ・ジャンは、エッグコーヒーで瞬く間に多くの人を魅了しました。
現オーナーに受け継がれてからも、創業時と同じ場所で営み、変わらない味を提供し続けています。その数、1日に2,000杯以上、多い時で3,000杯を提供しているんだとか。
その人気にハノイ市内を始め、ホーチミンなどベトナム国内、フランスやシンガポール、タイなど国外からもオファーが舞い込みますが、同店はすべてを断ってきたのです。
しかし、2018年のこと。ひょんなことからカフェ・ジャンでエッグコーヒーを飲んだ、現在のカフェ・ジャン・ジャパンの代表、陳祖明さんによって、この門外不出の味が、ついに日本へと持ち込まれることになったのです。