溶岩に消えゆく自宅を眺め…女神ペレに魅了された、ハワイ・プナの人々
そろそろ長期休暇の予定を決めたい時期。海外旅行の定番であるハワイですが、その魅力は海や気候だけではありません。独自の文化、そして歴史が、私たちを魅了しているのです。
前回ご紹介した、ハワイ島プナに誕生した世界で一番新しいビーチやファンキーなヒッピータウンパホアの話に続き、今回は魅力あふれるプナエリアをもう少しご紹介したいと思います。
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- >>>ハワイで一番ディープ&ピース。溶岩と生きる楽園プナの不思議な魅力(掲載日2019/11/21)
キラウエアは世界で最も活発な火山といわれると同時に、世界で最も安全な火山ともいわれていることを、ご存じでしょうか?
日本の火山爆発のイメージからするとちょっと想像し難いかと思いますが、この島の火山は大地震のように噴火と共に瞬間にして一帯を破壊してしまうわけではありません。
溶岩は少しずつ森林や集落を飲み込んでいくので、住民たちは常に溶岩の動き=ペレのご機嫌を注意深く観察しながら、これはもう避難が必要と判断するタイミングまではそこで生活を営みます。家のすぐ近所を溶岩の川が流れる中で暮らすというのはなんともレアで想像がつきませんね。
世にも奇妙な溶岩の上の集落
そんなプナエリアの風物詩のひとつに、溶岩の上の集落があります。1990年の火山活動で消失したカラパナの町の話を聞いたことがある人も多いと思いますが、そのカラパナの跡地…一面溶岩で埋め尽くされた荒涼とした大地の上に、家を建て生活する人々がいるのです。
私が最初にそこを訪れたのは、2008年のこと。キラウエア火山はハレマウマウクレーターの爆発で絶えず噴煙を上げ、連日空に向かって真っ赤な溶岩をあげていたときです。
昼間は明るくてわかりませんが、夜になって暗くなるとその様子がはっきりわかり、ちょうどカラパナの町の跡地が噴火口からあがる溶岩を見るのによい場所だったので、ビューポイントとなっていました。
水と懐中電灯を用意し、夕方暗くなる前にカラパナへと向かったのですが、そこで目にしたのは荒涼とした溶岩の大地に点在するトレーラーハウスの姿。まさか、ここに住む人々がいるとは想像もしていなかったので、とても驚いたのを記憶しています。
最初はポツポツと点在するのみでしたが、少しずつ数が増え、いまではトレーラーハウスの代わりにちゃんとした住宅が並ぶようにまでなっています。
2019年の夏訪れた際には、なんと道まで造られている一角もあり驚きました!そこだけ切り取れば、まるでごく普通の住宅街にも見えなくもありません。
もちろん、この地には電気も水道もありません。地熱を利用して電気を作り、雨水を利用して生活用水としています。道路もないので、4WD車がないとアクセスもできません。
わざわざそんな不便な場所に住むなんて「なんともモノ好きなこと!」という声も聞こえてきそうですが。すべてを溶岩が飲み込んでしまった地であるゆえ、そこは一面ずっと黒光りする溶岩の大地で、ただっ広く、殺風景な荒野が広がります。
けれども、目の前には女神ペレが棲むキラウエア火山がそびえ、そしてどこまでも高く、広い空が広がります。
黄金色に染まる夕陽の風景、大きく橋を架ける虹、降るように輝く無数の星々、雨の色、風の色…。それは紛れもなく宇宙の一部で、なんとも自然のパワーが満ちあふれた世界なのです。