美女にゾクっと…夏夜を涼む東京怪談さんぽ「本所七不思議」
燈無蕎麦/北斎通り付近
本所南割下水付近には、夜になると二八蕎麦の屋台が出ていた。しかし、そのうちの1軒はいつ行っても店の主人がおらず、夜明けまで待っても現れることはない。その間、店先に出している行灯の火は常に消えているのだった−−。

この「燈無蕎麦(あかりなしそば)」は、あっさりした怪異…に思えますが、迂闊にこの行灯に火をつけると、家へ帰ってから必ず不幸が起こるという、実は後味の悪い話です。
やがて「この店に立ち寄っただけでも不幸に見舞われてしまう」というウワサが立つようになり、江戸時代のミステリースポットとなりました。

逆に、誰も油を注いでいないのに行灯の油が一向に尽きず、一晩たっても燃え続けている「消えずの行灯(きえずのあんどん)」という話もあります。こちらも同じく、立ち寄ると不幸に見舞われてしまうというオチ。
本件もタヌキの仕業といわれており、浮世絵師である歌川国輝の作品『本所七不思議之内 無灯蕎麦』には、この説に基づいて店先にタヌキの姿が描かれています。
ちなみに、舞台となった本所南割下水は場所が特定されていませんが、南町公園には詳しく記載された案内板が立てられています。
墨田区で江戸時代から伝承される奇談「本所七不思議」について紹介しました。
みなさんお気づきかと思いますが、今回紹介した話は全部で9つ。まさかこれは話数が増える奇談…!?いえいえ、そういうわけではございません。
七不思議とはいえど、伝わりかたによって内容はバラバラで、エピソードも7つと決まっていないのが民話のおもしろいところ。
各話には諸説ありますが、これらの不条理な話こそが江戸文化の醍醐味なのです。不条理ないきさつを条理で落とす、まさに落語にうってつけのネタなんですよね。
今回ご紹介した本所七不思議以外にも、「麻布七不思議」や「深川七不思議」など地域によって七不思議があるところはまだまだあります。もしかすると、あなたのいま住んでいる場所もミステリースポットかもしれませんよ。
- 参考:青空文庫「おいてけ堀」
- image by:segawa7/Shutterstock.com
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