美女にゾクっと…夏夜を涼む東京怪談さんぽ「本所七不思議」
送り拍子木/緑4丁目付近
ある晩、割下水付近を「火の用心」と唱えながら拍子木を打って夜回りをしていた。すると、どこからともなく「チョン、チョン」と、自分以外の誰かが拍子木を打っている音が…。
その音は後ろから聞こえてくるが、振り返るとそこには誰もいなかった−−。

「送り拍子木(おくりひょうしぎ)」も有名な話のひとつですね。静まりかえった町中に拍子木の音が反響しただけではないのかという指摘もありますが、この日は雨が降っていたため音が聞こえてくるはずがありません。

そもそも拍子木を鳴らしていなかったのに聞こえてきたとの説もあり、真相は闇のなか…。これと同様の怪異として「狸囃子(たぬきばやし)」や「送り提灯」という話もあります。
狸囃子/春日通り付近
深夜になると、どこからともなく聞こえてくる、にぎやかな祭りばやしの音。どこから聞こえてくるのかと、その方向へ行ってみるも、音は逃げるように遠ざかっていく。
音を追っているうちに夜が明けると、そこは見知らぬ場所だった−−。

「狸囃子」は、別名「馬鹿囃子(ばかばやし)」とも呼ばれ、送り拍子木のように音にまつわる七不思議です。
平戸藩主の松浦清もこの怪異に遭遇したひとり。気味悪がって家来に音の所在を探させるも、割下水付近で音は消え、結局正体を突き止めることはできなかったのだそう。

「タヌキの仕業ではないか?」とのウワサから、音が聞こえたあたりを捜索しましたが、結局タヌキのいた形跡は見つからなかったのだとか。
ちなみに、日本の童謡『証城寺の狸囃子(しょうじょうじのたぬきばやし)』は、このエピソードが題材となっています。怪談話に想を得た曲だったのですね。
送り提灯/法恩寺
ある日、夜道を歩いていると、前方に提灯のような灯りが揺れて見えた。提灯を持たずに歩いており、道が暗くて困っていたので、あの明かりを目当てに行けば夜道も迷わないと思って近づくと、明かりは不意に消えてしまう。
キョロキョロと辺りを見まわし、しばらくするとまた明かりが灯った。そして灯りは点いては消え、点いては消えを繰り返し、結局いつまで経っても提灯に追いつくことができなかった−−。

墨田区太平にある法恩寺は、「送り提灯(おくりちょうちん)」の舞台。お寺の多い静かな町にある格式高いお寺です。
送り拍子木と同じように不思議な体験ですが、こちらもさまざまなオチがあります。灯を追っていたのに気がついたら自宅にいた話や、灯を持った女性と会話を交わすパターンなど、いくつかのバリエーションがあるようです。

なかには、「ふと気が付くと夜が明けて、葦の原でひとり佇んでいた。よく見るとそれは『片葉の葦』であった」というような、ほかの七不思議にリンクする内容の話も。