死者と共に暮らし、ミイラの服を着替えさせ…「トラジャ族」の大切な習俗
トラジャ族は「死ぬために生きる」
そのタナ・トラジャ県北部の葬儀だと思われる映像が、NATIONAL GEOGRAPHICに公開されています。
タナ・トラジャ県北部に限らず、県中央部でも南西部でも葬儀は大変盛大です。トラジャ族に共通する文化として、平凡社『世界大百科事典』に、
<スラウェシに住むトラジャ族は濫費的といえるほどの祭りを死者のために催す>(『世界大百科事典』より引用)
と書かれるくらい、盛大な催しが開かれます。
建築家の神谷武夫さんが書いた『トラジャ族のトンコナン・ハウス』には、この葬儀についての記述もあります。
「死ぬために生きる」とまで表現されるほど、トラジャ族の人たちは盛大な催しを開くために働き、お金を貯め、足りなければ借金します。
その葬儀は観光化までされて、村の人とは関係ない海外の観光客も桟敷席で観覧できるようになっているそう。
しかし、いけにえとされる水牛を用意しなければいけないなど、葬儀の費用は大変です。
そこで、葬儀の準備が整うまで、タナ・トラジャ県北部の場合は故人をホルマリンで防腐処理してから、生きている家族と同様に家に置いて一緒に暮らします。この暫定的な期間が、死者との別れを家族に受け入れさせる時間にもなっているのだとか。
その「自宅待機」ともいえる期間は、故人が生きているように家族が振る舞います。故人には食事まで用意され、喫煙者の故人の場合は、家族がタバコを吸わせてあげるのだとか。
スラウェシ島はオランダに植民地化された歴史があり、キリスト教も入ってきて、トラジャ族の人たちはほとんどがキリスト教の信者です。
しかし、長らく続いてきた土着の死生観がいまでも根付いていて、このような死者の扱いをしているのですね。
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