100年愛されるブランドのヒミツ…海外「老舗」企業の知られざる日本進出物語

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2024/03/13

ネスレのネスカフェ

image by:8th.creator/Shutterstock.com

次は、世界最大の総合食品メーカーとされるネスレ。ネスレと言われたら『ネスカフェ』などインスタントコーヒーを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。他には『キットカット』、炭酸入りミネラルウォーターの『ペリエ』もネスレの商品です。

ネスレは、創業者であるドイツ人の薬剤師アンリネスレが1867(慶応3)年、母乳代替食品の不足で亡くなる子どもを減らすために、乳幼児用シリアルを開発したところから歴史が始まります。日本がまだ江戸時代だったころですね。

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その後、ライバル企業としてしのぎを削りながらも根本的な企業理念で通じ合うアングロスイス煉乳会社という企業と1905(明治38)年に合併。ネスレ・アングロ・スイス煉乳会社として、ネスレグループの本格的なスタートとなります。

第一次世界大戦や世界恐慌などで苦しむ時期がありましたが、スイス最大のチョコレートメーカーを買収したり、オーストラリアで麦芽飲料『ミロ』の発売を成功させたり、インスタントコーヒーの『ネスカフェ』を1938(昭和13)年に販売したりして急成長を成し遂げます。

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日本への進出も意外に早いです。ネスレ・アングロ・スイス煉乳会社としてスタートしてから間もない1913(大正2)年、世界に拠点をつくる過程で横浜にも支店を設けます。

その支店を後に神戸に移すと、輸入だけでなく国内生産にも踏み切り、1933(昭和8)年には、淡路島にある藤井煉乳(後に淡路煉乳)と提携し、国内生産体制を確保します。

戦後になると、敗戦から5年後に『ネスカフェ』を占領軍に輸入、コーヒーの生豆の輸入自由化が1960(昭和35)年に始まると『ネスカフェ』の国内生産も追ってスタートさせます。

さらには、1960(昭和35)年に、上述した淡路煉乳と神戸支店の業務を一体化し、ネスレ日本も発足させています。

横浜への進出から数えれば、意外にも日本への進出が早かったネスレ。その後、日本人の暮らしにも欠かせないくらいのポジションを確立していくのですね。


マキルヘニーのタバスコ

image by:darksoul72/Shutterstock.com

最後はタバスコについて。『タバスコ』というと、あのボトルやラベルを誰もが連想できると思いますが、そもそも『タバスコ』はどこの国の商品なのかご存じでしょうか。

なんとなく、中南米あたりの国を筆者などはイメージしますがどうなのでしょう。メキシコのユカタン半島にはタバスコという州もあります。メキシコ由来の食品なのでしょうか。

エイブリー島には「Tabasco Country Store」というギフトショップも image by:Malachi Jacobs/Shutterstock.com

実は、調べて見ると、アメリカ南部のルイジアナ州のエイブリー島にあるマッキルヘニー社の商品だと分かります。

ちなみに、エイブリー島は、島とされていますが実際には離島ではなく、メキシコ湾に面した世界最大の岩塩の採取地になります。海岸線が入り組んでいるため、島のような雰囲気のある場所なのですね。

同社が、ルイジアナ州南部で独占的に栽培している果実をすりつぶし、塩を入れ、オークのたるで3年間発酵させたソースで、詳しい製法も極秘の香辛料になります。

マッキルヘニー社の創業は1868(明治1)年。メキシコや中央アメリカからキダチ唐辛子の種を持ってきて香辛料をつくり、創業の翌年には、近隣の大都市であるニューオーリンズの小売店に瓶詰した658本の製品を卸しました。

その際のラベルには「Tabasco」の文字が記されていました。「Tabasco」には、メキシコの先住民族の言葉で「土壌の湿った場所」だとか「サンゴやカキ殻の土地」といった意味もあるそう。

1870年代には売り上げを拡大し、アメリカ、ヨーロッパに展開しました。

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この香辛料の日本進出は、Nikkei Asiaによると第二次世界大戦後とされていて、一般的な知名度と人気を博した時期が1970年代とされています。この1970年代の拡大期に、あのアントニオ猪木さんが大きくかかわっているとも知られています。

アントニオ猪木さんが立ち上げたアントントレーディングという貿易会社がタバスコ販売の契約を結び、アントニオ猪木さんご自身が初代タイガーマスクと一緒にテレビコマーシャルに出演しました。

居酒屋のカウンターで日本料理にタバスコをかけるテレビコマーシャルがきっかけで、日本での知名度を一気に高めたとされています。

現在、195以上の国や地域、25カ国の言語で販売される中でも、アメリカ本国に次いで最もタバスコが消費されている国は日本だとの話。

日本人と『タバスコ』の遭遇はまだ100年が経過していませんが、現代のアメリカ人にとっては少なくとも100年前に使っていた香辛料と(ほぼ)同じ香辛料を食卓で利用している形になるのですね。

以上、海外発の有名食品ブランドがどのようにして日本に入ってきたのかを紹介しました。

もちろん、細かい製造方法の改善などはありながらも、基本的なコンセプトや商品名は100年近く変わらないまま受け継がれてきた商品ばかりです。

その歴史を知った上で食べると、何気なく口にする定番商品の味わいも深く感じられるかもしれませんね。

【参考】

 

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翻訳家・ライター・編集者。成城大学文芸学部芸術学科卒。富山在住。主な訳書『クールジャパン一般常識』、新著(共著)『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』。北陸のWebメディア『HOKUROKU』創刊編集長。WebsiteTwitter 

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