【書評】里山にはきっと何かいる。恐怖に満ちた「人里と深山の境界」

やはり「心霊スポットは危険だ。使われなくなった施設建物、廃集落や閉鎖された坑道などに多い。その場所を生活圏とする人々が、公的機関などしかるべきところに訴えて撤去すればいいはずだが、立ち入り禁止の看板やおざなりのストッパーを置いただけで、存在をそのままにしているのはなぜだ。

その理由が明かされているが、それが本当かどうかはともかく、好奇心で触れないほうがいい、ということである。廃墟の病院に探検にいった兄弟の話もリアリティがある。

一緒に入ったはずの弟が、弟ではなかった。弟は恐くて途中で兄について行けなかった。兄の肩に手を置いたのは、顔のない誰かだった。

山に入るのを控えるべき祭の日に、しかも女が入るのは禁忌とされる日に、祠の供物に気づいていながら、せっかくの休みに収穫なしではいやだと、里山に踏み行った虫好きの女性。

ウスバキトンボの尋常ではない大群に遭遇する。幻想的な光景だが、名状しがたい畏れから心がざわつき、見惚れている余裕はなく、トンボの群れと一緒に山を下りた。彼女は神様の警告だったと思っている。

里山を歩いていると、不意に空気が変わる。周囲を押し包む雰囲気が変わる。強く生臭い獣臭、肌を刺すような視線、一歩も踏み出せない強力な威圧感、何もそこに見えないのに……。

やだやだ。寝る前に読んでいたのだから愚かであった。「野山に入る者には、何か怪しいことに気づいてもその場では口に出さないという申し合わせ事項みたいのがある」らしい。これは大事なことだ。

編集長 柴田忠男

  • image by: Shutterstock.com,PR TIMES
  • ※初出:MAG2 NEWS(2016年8月9日)
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
いま読まれてます

デジタルメディアで活躍する現役クリエイターたちのコラムで構成されている本格派。総発行部数約1万6000! 真のクリエイターを目指している方からデジタルに関わる方まで、すべてに向けて発行中!

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら
登録!しよう
『 クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】 』

【著者】 クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】 【発行周期】 ほぼ日刊

 その他のエリア 外国人の「日本酒」爆買いが止まらない。世界に広がる地元のSAKE ★ 1341
 全国 実家に帰ると親がやけに優しい…夏の終わりに「帰省あるある」20選 ★ 142
  夏の離島ランキング、1位は黒島。「フォトジェニックな島」が上位独占 ★ 934
 青森 ちょっと今年の「田んぼアート」さん、本気出しすぎじゃないですか ★ 569
 全国 中高年にも人気!誰でも利用できる「青春18きっぷ」でおでかけ ★ 677
 東京 なんだろうこの懐かしさ。都内で食べる「台湾の駅弁」が密かなブーム ★ 458
エアトリインターナショナル コスパが高いLCC「ジェットスター」直行便でラクラク!ケアンズで大自然の癒やしを満喫しませんか?
【書評】里山にはきっと何かいる。恐怖に満ちた「人里と深山の境界」
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
TRiP EDiTORの最新情報をお届け
TRiPEDiTORオフィシャルメルマガ登録
TRiP EDiTORの最新記事が水・土で届きます