庶民の味方。城北信用金庫は、いかにして下町のヒーローになったか
信金の超人材活用術~アスリートで地域活性化
城北信金では特別な人材も働いている。高野靖部長が「精神力もあるしプライドもある。我々一般職員には経験がないですから」と評するのは、入庫2年目の職員、久良知美帆だ。
平日の朝、その久良知がトレーニングウェアで現れた。入っていった先は、オリンピッククラスのトップアスリートが利用する「味の素ナショナルトレーニングセンター」。そこで彼女が始めたのはフェンシングだ。
久良知が信金で働くのは週に1日だけで、あとの日は朝から晩まで練習。城北信金は給料を払うだけでなく、試合の遠征費や道具代まで支援している。
「入庫してからは、競技だけを考えて没頭できるので、すごくいい環境をいただいています」(久良知)
他にもカヌーやスキー、テコンドーなどの選手7人を正規職員として採用している。
「アスリートは普通の学生とは違うキャリアを積んでいるので、そういう体験を広く地域に還元して、地域活性化の起爆剤になってほしいと思っています」(大前)
地域活性化の起爆剤。その現場が荒川区内の小学校にあった。第三瑞光小学校で始まったのは、城北信金のアスリート職員による出前授業だ。やはりフェンシングの選手、森岡美帆の剣さばきに、集まった生徒たちはみんな夢中で見入っている。そして、森岡はトップアスリートだからこそ重みを持つ人生訓を伝えていく。
アスリート職員も広い意味での地域貢献。前向きな子供達が増えれば、地域は活性化していく。
~村上龍の編集後記~
赤羽の「街の八百屋さん」は印象的だった。威勢がよく、青果には絶対の自信を持っていた。
多くの地域で、主に郊外に強力な量販店が進出し、八百屋に限らず「街の店屋」が消えつつある。
城北信用金庫には、さまざまな新しい取り組みがあるが、そのベースは、長年に渡り築いてきた地域との信頼だ。信用金庫本来の伝統が脈々と生きている。
「街の店屋」が消えていくと大切なものが失われる。コミュニティ、そして帰属意識だ。
城北信用金庫は、顔が見える人間関係の重要性を、わたしたちに示唆している。
<出演者略歴>
大前孝太郎(おおまえ・こうたろう)1964年、東京都生まれ。慶應大学卒業後、住友銀行入行。1998年、内閣府参事官補佐・政策企画調整官に。2009年、城北信用金庫入庫。2015年、理事長就任。
source:テレビ東京「カンブリア宮殿」