魚津が荒れ狂う夜。「献灯みこし祭り」で八幡神社の悲しい歴史を知る
9月頃から日本全国で行われる「秋祭り」といえば、重たく茂る稲の豊穣を感謝するものや例大祭が多いですが、中には悲しい過去を偲ぶお祭りもあるようです。富山県魚津出身でメルマガ「あるきすと平田のそれでも終わらない徒歩旅行~地球歩きっぱなし20年~」著者・平田裕さんが、ジモト魚津市の「献灯みこし祭り」に秘められた悲しい物語を語ってくれました。
雄壮な献灯みこし祭り〜「宮あげ」で神輿が音を立てて踊る
「ダンダン、ダ、ダダダダ、ダンダン、ダ、ダダダダ。ダダンダダ、ダダダンダダ!」
境内の中央で、ライトに照らされ宵闇に浮かび上がったきらびやかな神輿。担ぎ手の男衆や観客の心を鼓舞する威勢のいい太鼓と横笛の音が、正面の木造の拝殿と後方の旧JR北陸線を継承した「あいの風とやま鉄道」のコンクリート製高架橋に反響し、さほど広くもない境内全体が異様な高揚感に包み込まれる。
子どもたちにとっても興奮して眠れない夜がやってきたのだ。
「カランカランカランカランカラン!」
突如、境内に鳴り響くベルの音を合図に男衆は神輿の横棒の下に肩を入れて担ぎ上げると、
「ヤッサヤーレ、ヤッサヤーレ」
と勇ましいかけ声を発しながら正面の拝殿めざして右へ左へよろめきつつ前進していく。よろめくのは彼らが酒を飲んでいるからだ。まさに神輿の酒気帯び蛇行運転! さあ、見逃すな、血湧き肉躍る「宮あげ」を!
境内と拝殿のあいだには5段の石段があり、これをどうにか駆け上がって神輿が拝殿内に突っ込んで止まると、今度は左右互い違いにユッサユッサと上下に猛々しく揺り動かす。祭り開催の喜びを神輿を激しく揺らす「宮あげ」で表現しているのだ。
キンキラキンな神輿の飾り物もそれにつられてシャリンシャリンと音を立て、御幣も幻想的にゆらめいている。この動きを3度繰り返すと神輿は境内の脇へと下がり、主役の座を次の神輿に譲る。神輿が引くと同時に観客からは男衆に対する大きな拍手が沸き起こった。
民が欣喜雀躍するさまを比喩的に神さまに披露しているとの言い伝えがある一方で、神輿を威勢よく拝殿に突っ込んでユッサユッサと揺り動かす一連の所作は、五穀豊穣や子孫繁栄を願うまぐわいの儀式とみるほうが自然だ。