濃さ、約31倍。北陸ダントツ人気の日帰り天然温泉「海王」
肌のトラブルで悩む人に「カイオウにでも行って来たら?」と誰かが助言する姿を、富山県に暮らす筆者は何度も目にしています。あるいは雪の激しい冷え込んだ北陸の夜に、「カイオウにでも行きたい」と弱音を吐く人も身の回りに少なくありません。
この「カイオウ」とは、富山県射水市にある「天然温泉 海王」のこと。加温・加水なしで源泉100%の天然温泉を日帰りで楽しませてくれる温泉施設です。
同施設は天然温泉シールラリー「ゆらん」参加温泉ランキングで6年連続北陸No.1に選ばれる温泉でもあります。そこで今回は富山旅行の際に観光客が立ち寄りたい、この地元住民に愛される日帰り入浴施設を紹介したいと思います。
足湯でもひざ下は1時間ほどポカポカに
「天然温泉 海王」がある射水市は富山県西部、県庁所在地の富山市と県下第2の都市である高岡市の間に位置します。
目と鼻の先には道の駅・カモンパーク新湊や新湊博物館がありますが、基本的に周囲は水田地帯。その水田の中に周囲と孤立して建つ日帰り入浴施設が海王です。
通り沿いに設けられた駐車場は、常に自動車でいっぱい。同店の屋外には無料の足湯もあるため、営業の仕事をしている筆者の知人は、寒い時期の外回りで心が挫けそうになっているときに、海王の足湯で気分を一新すると言っていました。
筆者も近隣を通りかかったときなどは、海王の温泉が恋しくて足湯だけを利用する機会もありますが、足早に立ち去るような楽しみ方でも、温泉に入れたひざ下はその先、1時間ほどポカポカしています。この泉質を求めて、県内のファンが大勢押し寄せているのです。
基準の約31倍もの成分が入った「濃い」温泉
海王のお湯はナトリウム−塩化物泉です。ナトリウム−塩化物泉とは塩化物泉の一種で、塩化物泉とは環境省が療養泉として認める泉質の1つになります。塩化物泉は、いわゆる「熱の湯」。定義は、
<温泉水1キログラム中に含有成分が1グラム以上あり、陰イオンの主成分が塩素イオンの鉱泉>(『広辞苑』より引用)
とあります。「陰イオンの主成分が塩素イオン(塩化物イオン)」とはちょっと難しい言葉ですが、化学の時間で習ったイオンの話ですね。
例えば海王のお湯の主成分であるナトリウム原子や塩素原子は、+の電気を持った原子核と−の電気を持った電子が、普段は+−ゼロで釣り合って存在しています。ただ、ナトリウム原子は電子をほかに与えたがる、塩素原子は電子を他からもらいたがる特徴があります。
ナトリウムと塩素が化学的に結び付いた場合、ナトリウム原子は−の電気を持った電子を放出するため+に傾き(陽イオンになり)、塩素原子は−の電気を持った電子を受け取るため−に傾きます(陰イオンになる)。
その知識を前提に海王の温泉を調べると、温泉水1kg(1,000mg)の中に、陰イオンの成分としては塩素イオン(塩化物イオン)が最も多く見つかるため、塩化物泉と定義されます。
さらにその塩化物泉の中には、陽イオンの成分としてナトリウムイオンが最も多く見つかるため、ナトリウム−塩化物泉と呼ばれるのです。
地中から湧出(ゆうしゅつ)する温水や鉱水1kg中に、含有成分が1g以上含まれていれば「温泉」と定義されるのですが、海王の場合は公式ホームページによると、1kg中に31.03gの成分が溶け込んでいます。
「温泉」(塩化物泉)の基準から見れば約31倍の数値ですから、海王の温泉水の「濃さ」がわかりますね。
環境省によれば、塩化物泉は、
<皮膚に塩分が付着するため、保湿効果・循環効果があります>(『あんしん・あんぜんな温泉利用のいろは』より引用)
との話。海王のお湯に入浴するといつまでも体がポカポカする理由は、まさにこの泉質と成分の「濃さ」が挙げられるのかもしれません。