ドキドキの共有で、恋は加速する。富山県「恋する灯台」への道

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2019/04/23

「恋する灯台」は灯台の意義や働きを知るきっかけにもなる

image by:坂本正敬

途中、クマに注意という看板が目に入ります。時期によっては、本当に気をつけた方がいいのかもしれません。急こう配の坂道を上り、きつい角度の曲がり角を折り返すと、左手に石垣が見えてきました。

この辺りは昔から岩崎石の産地として、盛んに石が切り出されてきた歴史があります。「これも岩崎石なのだろうか」と思いながら歩を進めると、不意に木々の間に灯台の灯火が見えました。岩崎ノ鼻灯台、恋する灯台ですね。

image by:坂本正敬

近づいてみると、灯台の前に駐車場のような広場が設けられていました。その意味で、この灯台は目の前まで自動車でも来られます。女性をあまり歩かせたくない男子には、耳よりの情報ですね。

白色の美しい塔形の灯台で、社団法人燈光会の設置した周知板を見ると、灯火は水面から57.5mの位置。その光ははるか37km先まで届くのだとか。

image by:坂本正敬

もちろん無人の灯台で、残念ながら囲いがしてあるため、灯台には近づけません。立ち入り禁止の灯台が一番の見晴らしを占有しているため、海も見づらく、正直景観が抜群に優れているとはいいがたいです。

しかし、潮騒が50m近く下の海から確実に響いてきて、海の力強い気配を感じます。クマが出るかもしれないという状況もあり、どこか落ち着かない不安を常に覚え続けていました。

image by:坂本正敬

そのとき、ふと思いました。筆者はもはや結婚をして子どもを2人授かった身ですから、何のために灯台に足を運んでいたのか半ば忘れていました。しかし、ここは恋する灯台です。友達以上、恋人未満の誰かと足を運んだら、この「冒険」に満ちた道のりと、潮騒の響く人里離れた非日常感が胸の高鳴りを一層強くして、心理学でいうつり橋効果のように、本気で恋に落ちてしまうのではないかと思います。

image by:photolibrary

恐らく日本ロマンチスト協会の選考委員も、景観で大きくポイントを落とすものの、灯台のある場所、灯台までの道のりなどを大きく加点して、岩崎ノ鼻灯台を恋する灯台と認めたのだと予想されます。岩崎ノ鼻灯台の周知板には、

<この灯台が、点灯以来数多くの船人の命と貴重な財貨を人知れず救ってきた>(周知板より引用)

と書かれています。


まさに「人知れず」で、無知を恥じつつ言いますが、富山に暮らす筆者ですら存在を知りませんでした。きっかけは「恋をする」ためかもしれません。しかし、今まで知らなかった灯台と、その意義や働きを知るきっかけにもなってくれる同プログラムは、とても有意義だなと感じた瞬間でした。

このゴールデンウィーク、「意中のあの人とどかかに出かけたい」と思ったら、全国マップで距離的に遠くない場所にある「恋する灯台」を探して出かけてみてください。思わぬ発見と、恋の成就が得られるかもしれませんよ。

image by:photolibrary

※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。

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翻訳家・ライター・編集者。成城大学文芸学部芸術学科卒。富山在住。主な訳書『クールジャパン一般常識』、新著(共著)『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日』。北陸のWebメディア『HOKUROKU』創刊編集長。WebsiteTwitter 

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