山奥にいながら、海と歴史を感じる。秩父のパワースポット「鷲窟山観音院」

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2020/08/08

埼玉県秩父地方には、34カ所の観音霊場をめぐる「秩父札所めぐり」があります。過去から現在まで多くのひとがめぐった札所は、静かな山村などに点在する寺院ばかり。

今回はこれら34カ所に定められている札所のうち、最も険しいともいわれる「鷲窟山観音院(しゅうくつざんかんのんいん)」をご紹介します。

のなかにありながらをも感じる、不思議なパワースポット。その歴史のなかに身を置くと、心がゆっくり癒されますよ。

※本記事は新型コロナウイルス感染拡大時のお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウィルスの国内・各都道府県情報および各施設の公式情報を必ずご確認ください。

自然と共存する秩父のパワースポット、「鷲窟山観音院」へ

34カ所に定められている秩父観音札所のうち、31番目の札所として定められている「鷲窟山観音院」は、秩父観音札所のなかで最も険しい場所にあるといわれています。

山門までは車やバスで行くことができるにも関わらず、最も険しい場所にあるといわれるその所以は、296段といわれている石段を上った先に本堂が構えられているからでしょう。

取材時期はアジサイが綺麗に咲いていました。image by:梅原慎治
長い石段も、アジサイを楽しみながら登るといくらか気が楽ですね。image by:梅原慎治

 
 

実際に上ってみた感想としては、普段運動をしている方なら問題なく登れますが、年配の方や運動不足の方にとっては、少々キツイ道のりかもしれません。

石段の途中には、12支の名を冠したお地蔵様が安置されています。image by:梅原慎治

またここの石段は曲がりくねった道に設けられており、先の見通しがつきにくいという点も、参拝者を心理的に疲弊させるのかもしれません。

ちなみにこの296段は、般若心経の276字、普回向(ふえこう)の20字を足した数字なのだとか。そう考えると、登る時間もなんだか少しずつ、心と体が清められていくようにも思えますね。


仁王門。image by:梅原慎治

先に石段についての感想を述べてしまいましたが、実は石段の手前には立派な仁王門があり、石造りの仁王尊像が安置されています。

この仁王尊像は、1868(明治元)年に信州の石工である藤森弥一寿氏観音院の裏山で採掘した石材で制作し、奉納したものだそう。

石造りの「吽形像」image by:梅原慎治

驚くべきはその大きさ。像の高さは一丈三尺(丈は10尺、1尺は約0.3m)ということですから、メートル法に換算すると約3.9mにもなり、台座を含めると4m超え。石造りの仁王尊像としては、日本最大級なのだそうです。

この記録が事実であるならば、いくつか疑問に思うことがあります。まず、観音院の裏山で採掘されたという石材についてです。数十cm程度の石であれば何の疑問も抱かないのですが、4mを超えるような巨岩が、そんな都合よく対(つい)で採掘されるものなのでしょうか?

この疑問は、この地の地質を紐解くことで解消されました。仁王尊像をよく見ると、その表面は少し斑模様となっています。1つの石というより、色々な物質が混ざり込んだコンクリートのような質感であるように見えるのです。

仁王像に使われている石は凝灰質砂岩(ぎょうかいしつさがん)といい、国内では主に地層に存在する、砂に火山灰が混ざったもの

つまりは仁王尊像を作るにあたり、都合のいいサイズの1つの石ではなく、堆積により石化した地層を裏山から切り出したのでは…と推測することができるのです。

こちらは「阿形像」image by:梅原慎治

さらに、このような巨石をどのようにして山奥から運び出したのかという疑問が残ります。堆積して形成された砂岩はやや重いため、密度としては約2.7g/平方センチメートル程度としてみましょう。

この値で4平方メートルの石の重さを計算すると10t以上となります。平坦な道であれば、コロなどを使って運ぶ事も可能かもしれませんが、ここは山奥。もしかすると、当時の巡礼者たちの協力があったのかもしれませんね。

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