【京都府】大正ロマンあふれる文豪・歌人ゆかりの宿

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2022/11/11

天橋立を望む絶景旅館と与謝野夫妻

【宮津市】対橋楼

宮津市・天橋立の入り口ともいわれる廻旋橋の目の前にあるのが「対橋楼」です。こちらの旅館は、1690年に智恩寺山門前に名物・智恵の餅を売る「勘七茶屋」として創業したのが始まり。次第に天橋立を訪れる人が増え、1868年に勘七茶屋の向かいに対橋楼を創業しました。

旅館の名前は当時の宮津藩主のお殿様が天橋立に訪れた際、天橋立に対して絶景の場所にあることからその名前を命名されたのだそう。

貴重な創業当時の写真がこちら。明治の初めにこんなに立派な旅館は珍しいかもしれませんね。

玄関から入ってすぐのところにあるロビーには、土間打ちの床に囲炉裏が。現在ではあまり見られない囲炉裏が目の前にあり、ついつい魅入ってしまいそうです。さらに旅の疲れを癒す智恵の餅もいただけ、身も心も満たされます。

また、お部屋は天橋立に近いこともあり、どの部屋からもその景色を楽しむことができます。特に「モダン和室」(写真)や「和のベッドルーム」からは廻旋橋も眺められますよ。お昼は観光で、夜はお部屋でゆっくりと天橋立を見ていられるなんて、他にはない贅沢ですね。

こちらでは歌人・作家の与謝野晶子を含め、多くの歌人が訪れています。館内にはミニギャラリー「晶子の部屋」を設け、晶子・寛(鉄幹)夫妻の掛け軸や、野口雨情、林芙美子の色紙などを展示しています。作品には天橋立や廻旋橋の歌も多くあるので、当時の風景を想像しながら鑑賞してみるのもおすすめです。

与謝野晶子・寛夫妻は、1930(昭和5)年5月に丹後に訪れた際、対橋楼に宿泊しました。その際に広間で丹後を巡った時の歌を詠んだのだとか。また、しばらくして1930(昭和15)年には、晶子と末っ子の娘・藤子と2人で訪れています。

天橋立の魅力もさることながら、旅館もリピートされているところに対橋楼の魅力を感じますね。

また、2006(平成18)年には、天橋立内に与謝野寛・晶子夫妻の歌碑が建立されました。完成時には藤子さんも訪れ、「父と母が寄り添って立っているようだ」と喜ばれていたのだそう。ぜひ、歌碑の方にも足を延ばしてみてくださいね。


提供期間11月6日~3月下旬

対橋楼の冬のお料理には「松葉がに」が登場します。その身は濃く、甘く、豊かな香りにぷりぷりした食感は、海の京都ならではの贅沢な味わいです。お造りや蒸し、焼きなどバリエーション豊富に楽しめますよ。

提供期間12月中旬~2月下旬

さらに、丹後地域発祥といわれる「ぶりしゃぶ」もおすすめ。ブリは80cm以上、10km以上にも成長する出世魚であり、丹後地域では縁起物として好まれています。

良質な脂を蓄えたブリは、薄くスライスしても旨味と程よい食感を楽しめますよ。多くの歌人も食したであろう冬の味覚を存分に味わってみてはいかが?

■■INFORMATION■■

対橋楼
場所:京都府宮津市天の橋立回旋橋畔
電話:0772-22-2101
公式ホームページ

名だたる偉人の作品が並ぶ「小さなちいさな美術館」

【宮津市】文人墨客の宿 清輝楼

元禄年間(1600年代末)に創業した「清輝楼」は、古くから多くの文人墨客に愛されてきた老舗旅館です。訪れた人の中には、京都の絵師たちや野口雨情、菊池寛、吉川英治といった名だたる作家・詩人も。その際に彼らが遺していった襖絵や名書、詩歌などの作品は今でも旅館に保存されています。

その作品たちをより多くの人たちに見てもらいたいという想いから、こちらでは「小さなちいさな美術館」と称して、館内のいたるところに展示しています。早速、展示されている作品の一部を見てみましょう!

まずは3階の大広間から。こちらは宴会などに使われている場所で、隣の広間と合わせると105畳もあるのだそう!

そして1番に目を引くのが幕末~明治時代に活躍した絵師・日本画家の鈴木百年が描いた『十二ヶ月押し絵貼り襖』。彼の作品が一堂に会するのは京都の美術館でもなかなかなく、現役の芸術家さんも勉強に見に来られるのだとか。

続いては宮城県仙台市にある輪王寺の無外和尚の書。彼は書の道でも有名で、無外和尚の書を日本三景の旅館に一筆ずつ遺す活動の際に、清輝楼が選ばれました。

書には『蒼龍臥波』としたためられていて、これは旅館の3階から天橋立を見ると、まるで蒼い龍が波に臥(ね)ているように見えるという意が込められています。ぜひ窓からの景色と合わせて眺めてみてください。

2階の中廊下の天井付近には、全長9m10cmの長さを誇る『与謝江海図』(作者不明)が。こちらは江戸時代後期の作品で、丹後半島の先端、経ヶ岬から天橋立付近までの東海岸が描かれています。

絵には丹後半島の名所やお休み処なども丁寧に落とし込まれており、当時のガイドブックのような役割でした。写真がなかった時代でも、当時の様子を知れると思うと感慨深いですね~。写真では全貌が見えにくいですが、HPにも掲載されているので、ご参考ください。

1階の「文人の間」には、明治以降の文人墨客の作品が展示されています。

写真は詩人・野口雨情の書。名前を聞いてもピンとこない方もいるかもしれませんが、童謡『七つの子』や『シャボン玉』などの作詞をした人なんですよ。他にも彼が遺した詩は数知れず。音楽の教科書を開くと彼の名前がたくさんあるかもしれませんね。

吉田茂の書

ほかにも、第45代内閣総理大臣を務めた吉田茂、『宮本武蔵』『新平家物語』などを書いた小説家・吉川英治、といった誰もが知る偉人たちの書が展示されています。

この「小さなちいさな美術館」は、宿泊やお食事で利用した方のみ見学できます。宿泊のハードルが高いなぁと感じる方は、まずは日帰りでお食事をいただくのもおすすめ(完全予約制)。

冬期はカニ料理や寒ブリのしゃぶしゃぶが登場しますよ。昼食・夕食の時間帯で利用できるので、予定を立てて訪れてみてくださいね。

■■INFORMATION■■

文人墨客の宿 清輝楼
場所:京都府宮津市魚屋937
電話:0772-22-4123
公式ホームページ

  • source:KYOTO SIDE
  • ※掲載時の情報です。内容は変更になる可能性があります。
  • ※本記事は新型コロナウイルス感染拡大時のお出かけを推奨するものではありません。新型コロナウイルスの国内・各都道府県情報および各施設の公式情報を必ずご確認ください。
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