2000人の村に希望者が殺到!?「仕掛け人」が語る、地域移住のススメ
トークセッション「名古屋より岡崎!×名古屋より東吉野!」
今回「マチノコト」でレポートとして紹介するのは、「リノベーション」や「まちづくり」、「移住」をキーワードに行われたトークセッション「名古屋より岡崎!×名古屋より東吉野!」。
登壇したのは、愛知県岡崎市の「NPO法人岡崎まち育てセンター・りた」で事務局次長を務める山田高広さんと、奈良県東吉野村で「オフィスキャンプ東吉野」を営まれる坂本大佑さん。
「Rナシンネンカイ」の企画者である岡本ナオトさんの司会によって、トークセッションは進行していきました。
ーー山田さん、今一番岡崎で面白いことってなんですか?
「不動産を買うということですね。昭和40年代頃に建てられた集合建築は、みんなでお金を出し合って、家族や親戚と共同で住む形態を取っていました。しかし、土地の所有者も建物の所有者もばらばらになってしまい、誰かが『真ん中の建物だけ壊したい』と言っても出来ない状態が、生まれているんです。不動産としての価値は当然低いし、不動産業者も仲介が出来ない。でも、そういった場所にこそポテンシャルがある。そうしたときに登場するのが僕で、先日も数十万円でビルを売買の交渉に入りました。そのビルは、1階に美味しいパン屋、2階に人の居住スペース、3階がシェアのアトリエになる予定です。大衆的には価値がゼロでも、届くところに情報が届けば、その人たちが新たな価値をプラスしていく。逆にお金を出しても欲しいものが買えない時代が来ているのかなと思います」。
ーー坂本さん、「シェアオフィス東吉野」ってどんな場所なんですか?
「『シェアオフィス東吉野』は、小学校の校長先生が所有されていた築70年ぐらいの古民家をリノベーションしました。東吉野村は、自治体として存続可能な人口ぎりぎりの2000人の村で、村長も国と県に働きかけながら、移住・定住の事業に取り組むなかで「シェアオフィス東吉野」も国・県・村3つのお金で改修工事をしました。オフィスの前には上流部にダムのない関西でも珍しい川があって、川のせせらぎで目が覚める。鮎やアマゴも取れるし、少し行くと温泉もあるんですよ。わざわざこの環境を求めて来る方もいらっしゃって、去年1年で1100人ぐらいの方が来てくれました。そのうち300人の方がシェアオフィスの利用のために来てくれて、その約3割は海外の方でした。奈良県という土地の持つ力もありますが、みんな街の中にあるものに飽きてきていて、東吉野にある『よくわからんもの』に惹かれて来ているのかなと実感として思います」。
ーー山田さんの今楽しいことはなんですか?
「『土日何してますか?』と聞かれたときに『こんな面白いことしてるよ』って言える方はいますか?僕らって『遊ぶところ難民』なんですよね。土日に子どもと、どこで遊ぶか考えたときに選択肢がない。人が作った公園やカフェではなくて、自分の場所を家以外にどう作っていくか。そう考えたら、今僕の楽しいことのもう一つは公園です。公園をこれからリノベーションしていきたいと思っています」。
――公園ってそんなに重要なんですか?
「商店街に一つお店を入れたとしても、そこだけ流行ってしまえば、周りのお店からお前の店だけ儲かっていると怒られてしまう場合がある。だけど、公園は、商店街や街の人たちが共有して持ってる財産で、公園にたくさん人が来れば、自分のお店にどれだけ人が来てくれるか、自分の好きな人がどれだけ街に来てくれるか工夫を考えるようになる。一番の公共であり、みんなのものである公園は大事だと改めて思います」。
ーー坂本さん、東吉野に若いクリエイターが集まっているようですね?
「去年、1年で約4組移住してくれました。東京でも活躍するカメラマンのご夫婦、大学の博物館の職員さん、バリバリの革職人、ニューヨーク在住のデザイン事務所でクリエイティブディレクターをやっている外国の方と多様です。移住希望の人は、今も、3組ぐらいいますね。『なにもない』が、良いのかもしれません。クリエイターのコミュニティは良い意味で狭くて、『ここ良かったからお前らも行って来いよ』と誰かが言うと、すぐに波及していく。層が薄いから刺さるスピードも速いんですね。移住後の孤独感を解消する点においては、オフィスキャンプがあるということも、精神的柱になっているようです。近くに役場もあるから、すぐ声もかけられるし、移住者同士でもコミュニティを形成していて、村の人たちもそこに入っていっています」。
――2000人の村人は移住者をどう思ってるんですか?
「びびってるんじゃないですかね(笑)。でも、そこは村長が口を酸っぱく、『こういう事業をやるから、あなたの隣の家に若い子がいきなり住むかもしれない、だから温かく迎えてやってくれ』と村人に村長が何度も言ってくれてるんですよ。東吉野村には、村営放送があって、テレビから、村長が『温かく見守ってくれ』と言ってくれている。村長が率先して言ってくれるのは大きいですよね」。
――最後に一言ずつお願いします。
山田さん「名古屋で面白いことしにくいなと思ったら、地方に来たらいいんじゃないかと。受け入れ態勢を作るのは僕らの役割なんで、いつでもお待ちしています」。
坂本さん「移住は、人の一生を左右すること。どこで暮らすかというよりは、誰と暮らすかが大事で、『誰』の1つにオフィスキャンプが数えられればいいなと思います」。