走る「デゴイチ」で人気復活。鉄道公園を救った車両たち
ピンチに駆けつけた?「キテツ」「デゴイチ」
しかしハイモも、キハに負けず劣らず年季の入った車両。いつまで今の形で乗車体験が続けられるかは不透明です。
「公園に来る方は動態(動いて保存している状態)を楽しみにしている方が多い。なんとかしたいが、(乗車体験を続けられるかどうかは)今のところ見通しが立たない状態です」。
2月、本紙の取材にそう応えていた町の担当者・商工観光課の梅本さん。ところが3月、御坊市のミニ鉄道・紀州鉄道から、自走できず待機状態になっていた車両「キテツ」が公園に譲渡されることに。
さらに4月には、大阪のアチハ株式会社(以下アチハ社)により、蒸気機関車「デゴイチ」も公園にやって来ることになりました。
どちらも自走できるよう公園内で整備が進められており、キテツは早期に自走できる見込みで、デゴイチは「夏頃の運行を目標にしています(アチハ(株)の担当者)」とのことで、早ければ夏にもキテツ・デゴイチ・ハイモと、3台そろい踏みの乗車体験が見られるかもしれません。
「それくらいを目標にしています」(梅本さん)。
有田川町でオールド車両が競演 さらに蒸気機関車が増えるかも?
アチハ社の発表資料によると、デゴイチは昭和18年に浜松で製造されたもの。
輸送事業を行う同社では、「鉄道文化遺産である蒸気機関車を新たな形で未来へと引き継ぐプロジェクト」を実施するとしており、有田川町鉄道公園で復活を目指すことになりました。
整備はアチハ社が行い、石炭ではなく、より安全性の高い圧縮空気で動くように改造。
雰囲気を出すため煙を出す装置も付けられることになっており、年輩の方には懐かしい、煙をたなびかせて走る姿が見られることになりそうです。
アチハ社は資料の中でデゴイチ以外の蒸気機関車の復活も目指すとしており、「整備作業は有田川鉄道公園内で行う予定で、今後、新たな蒸気機関車がお目見えするかも?」とのこと。
「搬入以来問い合わせが増え、あらためて人気の高さを感じています(梅本さん)」というデゴイチ。
もしこれから台数が増えるとなれば、鉄道公園はさらに注目を集める施設となりそうです。
「町内を走っていた有田鉄道を後世に伝えることを目的に整備(町HP)」された鉄道公園
キハは毎週の様に現役時代と変わらぬ勇姿を見せて走り、鉄道ファンのみならず、有田鉄道を知らない子どもたちも楽しませて来ました。
牽引ではあるものの、ハイモもそのピンチヒッターを勤めてきました。
車両の整備には、かつて有田鉄道で働いていた人をはじめ元鉄道マンがボランティアで当たっており、修復が難しいと見られるキハも整備は続けられているそうです。
「まだあきらめたわけではありません。なんとかしたい、と思っています」(梅本さん)
ピンチから一転、にぎやかになった鉄道公園。まるでそのピンチに駆けつけるかの様にキテツとデゴイチがやって来たのは、関係者の努力もさることながら、今までがんばってきたキハ・ハイモと、支えて来た人たちの鉄道への想いがあったからこそ、なのかもしれません。